伊豆大島の土石流災害から1ヵ月。島の想いと、災害の現実について

台風26号から1ヵ月が経ち考えることは、伊豆大島の現実はどこでも起こりえるということ。自分の愛する人や土地、自分自身が被災する可能性を考え、他人まかせだけではない自分自身の防災を考えることが大事だと、改めて感じています。
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台風26号による伊豆大島の土石流災害から1ヵ月が経ちました。11月16日時点で亡くなられた方は35人、行方不明となっている4人の捜索は現在も続けられています。この1ヵ月の島の苦労は相当なものであり、この度の災害で被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

大島社協災害ボランティアセンターの情報をみると、毎日多くのボランティアが復旧作業にあたられており、非常に心強く思います。

いまから2年前、伊豆大島で取材をした方のご自宅が被災地域にあったため、災害を知った時から無事を祈っていると、あるメディアでその方がボランティアのためにおにぎりをつくって届けていると報じられており、元気な姿に安堵しました。

その方は、伊豆大島で陶芸家をされている川浪さんといい、ふとしたご縁で伊豆大島で暮らしはじめた移住者でした。当時の記事で川浪さんは「大島は、良くも悪くも閉鎖的なところはあるけど、昔ながらの人情っていうか、そんなところが残っています。 いつのまにか20年暮らしていて、こんな風にやってこれたのは、素直にここの土地を愛して、ここの暮らしを愛して、島の人と仲良く暮らしたいって思っていたら島の人たちは助けてくれました」と島について話してくれました。

川浪さんの言葉は、「土地を愛すること」「素直に生きること」の素晴らしさを教えてくれたもので、私のなかでも忘れられない取材になりました。

リトケイでコラムを連載いただいているトウオンデザインさんは、「なんとかしたい」と、伊豆大島の復興支援にもなるカレンダーの販売や展示をはじめています。

トウオンさんは「今回の災害によって島の基幹産業である観光業への影響が心配されています。被害を受けている方々からお話を伺うと皆さん口を揃えて今後の見通しがたたず将来の展望がまったく描けないとおっしゃっています。山肌が大きく抉れた三原山を目の前に、がれきや土砂の撤去に明け暮れていると、以前のように観光客の方々が戻ってくるのか?とっても不安になります」と、不安を感じながらも、「そんな状況の中だからこそ、僕らは引き続き伊豆大島の魅力を伝え続けていきたいと思います。そして、今回の災害を乗り越えることで、伊豆大島に暮らす人々はより強く、より魅力的になっていくものと信じています」と前を向いています。

今、伊豆大島には川浪さんやトウオンさんをはじめ、島のために前に進もうとする方がたくさんいて、島外に暮らす出身者やボランティアなど多くの方が加勢しています。伊豆大島では義援金の受付も行っております。島外の方には、島の動きを温かく見守り、島の想いを支えていただけたら嬉しいです。

また、人口約8,000人の島で起きた自然災害に、行政の対応や防災の在り方について物議もありますが、まず「24時間に824mmの豪雨が降ったこと」が原因にあることは忘れてはいけない事項だと感じています。

今朝の朝日新聞に、「ここ20~30年で土砂災害が1.5倍に増えている」という記事を見かけました。土砂災害の原因には大雨がありますが、気象庁のサイトにある歴代の降雨ランキングを確認すると、伊豆大島の大雨が観測史上3位にあたることが分かりました。

大雨が頻発する原因には地球温暖化があり、フィリピンで未曾有の被害をもたらした台風30号も、温暖化による海水温の高さから風速90mという破壊的勢力に成長したといわれています。

地球温暖化については多くの議論を要するためここでは割愛しますが、多くの人に知っていただきたいことは、「経験にない」「想定外」と呼ばれる災害が増えている現実です。

台風26号から1ヵ月が経ち考えることは、伊豆大島の現実はどこでも起こりえるということ。自分の愛する人や土地、自分自身が被災する可能性を考え、他人まかせだけではない自分自身の防災を考えることが大事だと、改めて感じています。

(※こちらの記事は2013年11月16日の「離島経済新聞」より転載しました)