ジョージ・オーウェルの小説「1984年」を題材にした舞台「1984」で、観客が観劇中に失神や嘔吐する事態が起きている。
ブロードウェイの公式チケット購入サイトには、「フラッシュライト、ストロボ、轟音、銃声、タバコの煙、そして非常に写実的な暴力と拷問の描写があります」と書かれ、13歳以下の入場は不可とされている。
「Broadway.com」公式サイトより
The Hollywood Reporterによると公演では、気絶したり嘔吐する人が続出したのに加え、熱狂した観客が逮捕される事態にまで発展したという。
「1984年」は、ジョージ・オーウェルが1949年に出版した反ユートピア小説。全知全能の「ビッグ・ブラザー」が徹底的な監視体制で国民をコントロールする全体主義的な近未来が舞台だ。個人の日記までもが全て監視され、支配に不都合な事実は書き換えられ「なかったこと」にされる。
出版から70年近く経った今でも、反ファシズムや反全体主義をを象徴する作品として読み継がれている。朝日新聞デジタルによると、トランプ大統領の当選直後には日本でも同書が改めて見直されたという。大統領就任前の6~7倍のペースで売れ、計4万部を増刷した。
■これは「おばあちゃん用の劇じゃない」
「1984」に出演する女優のオリヴィア・ワイルドは自身のInstagramに、作品の注意事項を書いたポスターの写真を投稿し、以下のようにコメントした。
超強烈な世界を描く、超強烈な原作本の中に登場する、あなたがもう覚えてないかもしれない超強烈なものがたくさん出てきます。今晩、卒倒した観客の方達が無事であることを祈っています。
また、ハッシュタグで「#notyourgrandmasbroadwayshow(おばあちゃん用の劇じゃない)」とも付け加えた。
■「世の中で起きていることはもっとずっと酷い」
演出家のダンカン・マクミランとロバート・イッケは観客のこうした反応を受けても、演出方針を変えるつもりは絶対にないという。
イッケはHollywood Reportersの取材に対して以下のように語った。
観客は(舞台上の酷い状況を目の当たりにて)席にとどまることもできるし、去ることもできる。
それは、誰かが拷問されているのを見てどう反応するのか、と全く同じ(選択肢)だ。
でも、もしもこの劇がその観客にとって、1日の中で最も動揺する場面なのだとしたら、その人はニュースを読んでいない。
世の中で起きていることはこの劇場で起きていることよりももっとずっと酷いのだから。
「1984」は6月22日からアメリカのブロードウェイで上演中。
▼オリヴィア・ワイルドがInstagramに投稿した劇場写真