スコットランドが9月18日に独立の是非を巡って住民投票します。最新の世論調査で賛成派が反対派を上回ったことから、急にスコットランドの独立が現実味を帯びてきました。
そこで若しスコットランドの市民が独立に賛成という意思表示をした場合、それがマーケットや政治に与える影響を考えてみます。
まずYESの場合、ポンドは当然としてユーロ、イギリス株、欧州株のボラティリティが上昇することが考えられます。
キャメロン首相は、たぶん辞任しなければいけないと思うし、労働党のミリバンド党首も党首の座を譲らなければいけないでしょう。なぜならこの両人はスコットランド独立の可能性を軽視してきたからです。イギリス政府の準備不足の責任を、この二人が負わされる可能性が高いのです。
その場合、与野党のリーダーシップが同時に代わるので、政治は混とんとすることが考えられます。
労働党はスコットランド出身の議員が多いので、彼らがイギリス議会を去ると、労働党の勢力は大幅に弱体化する懸念があります。
スコットランドは独立するとなった場合、ポンドを継続的に使用することを希望していますが、これに関してはカーニー英中銀総裁、イギリスの三大政党の党首らが、それに否定的なコメントをしています。
若しスコットランドがポンドを使用できないことになった場合、スコットランドは英国の債務を分担することを拒否することが予想されます。
スコットランドの沖合には北海油田があり、それがイギリスの国庫の収入源としてアテにされていることから、このシナリオでは国債に対する不安が生じる可能性もあります。
スコットランドは親EU派です。そこでスコットランドはユーロを使いたいと申し入れる可能性もあります。しかしEUの共通通貨の使用が許されるには、一定の手続きの下、要件を満たす必要があります。これは待ち時間が長いと予想されます。その間、どうするか? という問題が生じるわけです。
またスコットランドにEUが甘い態度を取ると、スペインやイタリアの分離独立派を勢い付かせる懸念もあります。
スコットランドは北海油田があるので、独立後も財政的には問題なく運営できるだろうと言われています。ただスコットランドがノルウェーと同じような、お金持ちの産油国になる可能性は、絶望的です。
なぜならスコットランドには過去の「蓄え」が無いからです。ノルウェーのソブリン・ウエルス・ファンドは890億ドルもの資産を持っています。このストックがあるので、今後北海油田が枯渇した場合でもノルウェーの国民は長く良い暮らしを続けることができます。
一方、スコットランドは「その日暮らし」に近い状況になります。北海油田の可採年数に関してはいろいろな説がありますが、BP Statistical Reviewの統計を見る限り、未来はバラ色とは言えません。
下は確認埋蔵量です。ノルウェーに比べて英国の方が貧弱です。スコットランドは、大体、このうちの7割程度を引き継ぐと予想されます。
次は生産高です。すでにノルウェーも英国も、とっくの昔にピークを過ぎています。
英国のRPレシオ(このままの生産水準を維持した場合、あと何年、生産し続けられるかの年数)は9.6に過ぎません。因みにサウジアラビアは63、クウェートは89、ノルウェーは12.9です。
いずれにせよスコットランドがノルウェー型の経済を目指すというのは上のグラフを見た限りでは甘い気がします。
(2014年9月11日「Market Hack」より転載)