『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』-宿輪純一のシネマ経済学(11)

映画好きならば、知らない人はいないマリリン・モンローであるが、映画の中でのイメージは良く知っても、36歳で死んでしまった本当の彼女のことは知らない方が多いのではないか。
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『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』(Love, Marilyn)2012年(米/仏)

映画好きならば、知らない人はいないマリリン・モンローであるが、映画の中でのイメージは良く知っても、36歳で死んでしまった本当の彼女のことは知らない方が多いのではないか。ちなみに、筆者はアートも好きなので、アンディ・ウォーホルの彼女のシルクスクリーンも大好きである。

マリリン・モンローは本名ノーマ・ジーン・ベイカーといい、1926年ロサンゼルスに生まれた、その後、62年に36歳でこの世を去る。この映画はそのマリリン・モンロー没後50年(2012年)ということで作られた作品なのである。

彼女は身長166.4センチ・体重53.5キロ、B94・W61・H86で、靴のサイズは24.5センチといわれている。結婚は3回で、離婚も3回、42年(16歳)に一般の人と結婚するも4年後に離婚。54年に野球選手のジョー・ディマジオと結婚するも1年後に離婚。この時には新婚旅行で来日し帝国ホテルに宿泊した。その後、56年に、映画にもなった(悲しい)「サラリーマンの死」等のベストセラー作家のアーサー・ミラーと結婚するも5年後に離婚している。

45年(19歳)でハリウッドのモデルクラブに所属し、徐々に映画への出演を開始。多数の映画に出演するが、特に53年には『ナイアガラ』(この作品でモンローウォーク)、『紳士は金髪がお好き』、『百万長者と結婚する方法』の3本に出演し一気に大スターに、その後、55年には『七年目の浮気』、59年には『お熱いのがお好き』に主演した。

映画の中でも語られているが、彼女は小さいころから女優になるのが夢だった。それも演技派の。しかし、「おバカな金髪娘」のイメージが強すぎて、それから脱却するために、55年から(インタビュー番組で有名な)アクターズスタジオに通って真剣に演技の勉強をやり直した。その甲斐あってか『お熱いのがお好き』はゴールデングローブ賞 主演女優賞を受賞している。

そんなマリリン・モンローであるが、本作品は、初公開された自筆のメモや詩や手紙をベースとして、彼女の"真の人物像"を浮き彫りにするドキュメンタリー。それも、グレン・クローズ、ユマ・サーマン、マリサ・トメイや、リンジー・ローハンなどなど年齢もキャリアも異なる現役女優たちがマリリン自身となって、我々に話しかける。仕事(演技)への高いプロ意識や私生活での悩みなどがつづられ、死ぬ直前までの等身大の女性の命がけの奮闘は心を打つ。

えらそうなことをいうつもりもないが、彼女の悩みは"本当の自分"と"外から評価されたイメージの自分"との"ギャップ"ではないか。個人の人生でも、経済でもこのギャップが問題(悩み)となる。経済では、通貨危機をはじめとした"値崩れ"といったような金融危機等は、まさに現実と現状と「ギャップを埋めていくもの」ということができる。

たとえば、いろいろな評価があるが"日本の国債・財政"は、金額でみても、比率でみても、そして他の国との比較においても、良いということはできない。しかし、日本の国債市場は大きな値崩れもなく、低金利で安定しているようにみえる。このギャップを埋めにいくのか、いつそれが起こるのか、ということを市場は気にしている。何人か値崩れを予想(予言)していたエコノミストは、オオカミ少年と呼ばれてしまった。

マリリン・モンローはそのギャップを埋めることができなかったようである。しかし、一生、日の目を見ない人も多いのを考えると一度でも、大スターになって、その部分だけも幸せではないか。

個人的には、ケネディ大統領が撃たれる10日前に、彼女が彼に歌った『ハッピー・バースデー・ミスター・プレジデント』がなんともいえずに好きであるが、その辺のくだりはあまり触れていないようである。これが彼女の公的な最期の映像にもなった。なお、その前の年にはオードリー・ヘップバーンが歌ったようである。

第26回東京国際映画祭が2013年10月17日(木)~10月25日(金)の9日間、六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールで開催されます。一般の方も参加できます。