マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の研究チームが、1型糖尿病患者を毎日のインスリン注射から開放する治療法を開発したと発表しました。患者は幹細胞から創りだした膵臓のβ細胞を移入するだけで自らインスリンを生産できるとしており、機能維持も2~3年に一度の移入注射だけという手軽さです。
1型糖尿病といえば、免疫機能が膵臓内でインスリンを分泌するβ細胞を破壊してしまう自己免疫疾患。正確な原因はわかっておらず、現在の医療では、ドナーから正常な膵臓を移植したり、インスリン注射を毎日続けなければなりません。日本での発症率は10万人あたり1~2人。イタリアや北欧といった一部地域で発症率が高い傾向にあります。
研究チームは2014年に膵臓β細胞の増殖を促進する幹細胞研究を発表していました。今回の発表では、1型糖尿病用に培養したβ細胞を実験用マウスに移植したところ、拒絶反応もなく有効に機能することを確認できたとしています。この膵臓β細胞を移植したマウスは174日間、自前でインスリンを生産し続けることができました。
この方法を人間に適用した場合、インスリン分泌機能を維持するには2~3年に一度、膵臓β細胞を移入するための注射を受けるだけで良いとされ、実質的に新しい膵臓を手に入れるのとほぼ同じ効果が得られそうです。また患者にとっても毎日欠かさずインスリンを打つ必要がなくなり、大きな負担改善となることが期待されます。
研究チームは、2~3年以内には臨床試験を開始したいとしています。
ちなみに、見出しの画像は米国のプロ自転車チーム Team Novo Nordisk。所属選手全員が1型糖尿病患者ながら、世界各国のトップレースに参戦しています。
[Images : Team Novo Nordisk]
(2016年1月26日 Engadget日本版「1型糖尿病患者のインスリン注射を不要にする治療方法が開発。2~3年以内に臨床試験を開始予定」より転載)
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