虐げられる女性たち―「私たちは家畜じゃない」ギリシャ難民キャンプからの叫び

難民の受け入れは、ギリシャ、トルコ、EUだけの問題ではない。

レスボス島にあるカラ・テぺ難民キャンプ © Michael S Honegger

アフガニスタンの女性ジャーナリストで、タリバンから銃撃を受けたシリン(仮名)は命からがら国境を越え、ギリシャの難民キャンプにたどり着いた。

しかし難民キャンプでの生活は悲惨なものだ。「私たちはまるで家畜のように扱われている。それならまだ撃たれたほうがましだ」とシリンは嘆く。

シリンがいるのは、レスボス島にあるカラ・テぺ難民キャンプだ。レスボス島はトルコ沿岸部にあり、ギリシャ本土よりトルコの方が近い。

ヨーロッパでは26ヶ国がシェンゲン協定というのを結んでいる。加盟国の領域内であれば、国境を越えるのに審査は不要だ。つまり域内のどこかの国で難民と認定されれば、その後の移動が自由にできるのだ。

レスボス島はシェンゲン圏への玄関口とあって、シリアやアフガニスタンからトルコ経由で難民が次々と到着し、多くの難民キャンプが作られた。しかし、どこの難民キャンプも今や飽和状態にある。新天地・ヨーロッパでの生活に希望を託し、レスボス島を通過地点として目指したはずが、行き場もなく立ち往生している。

2015年に数十万人の難民・移民が到着して以来、受け入れ態勢が追い付かずに荒れ果てたキャンプに、次々と難民が押し込まれている。配給の食糧で暮らす日々は、シリンが言うようにまるで家畜の状態と言えるかもしれない。

そのカラ・テペ難民キャンプですら、キャンプの中でも良い状態だと言われている。難民が来るのも去るのも自由で、ドアのついている男女別のトイレやシャワーがあるのだ。その他のキャンプでは、ドアもない男女共用のトイレやシャワーしかなく、女性たちは安心して生活をすることができない状態にある。多くの女性が性的な嫌がらせや暴力にあっているという。

モリアで最近閉鎖された軍が設営したキャンプでは、テント暮らしを余儀なくされていた。ある23歳の女性によれば、夜中に一人で寝ていたところ、見知らぬ男性がテントに侵入してきたのに気づき、凍りついたという。

レスボス島の南キオス島にある悪評高いヴィアル難民キャンプでは、どこからか酒を入手した男性が泥酔していても、警察は止めもしないという。男性のケンカが始まると、女性たちはすぐに逃げ、隠れるしかない。警察は笑って、何の手助けもしない。

難民キャンプでの生活が大変なだけではない。多くの女性は、夫を紛争で亡くし、幼い子どもを連れて逃げてきている。助けを求めようにも、頼れる者がいないのだ。

ギリシャのキャンプは、難民認定申請のための施設として当初設立された。しかし、EUとトルコの協定によって、突如として拘置所のような施設へと変貌した。このEUとトルコの協定とは、EUが難民の流入を防ぐために、ギリシャに入国した難民認定申請者をトルコに送り返し、トルコから難民を選択的に受け入れるというものである。すでにこの合意は効力を持ち、ギリシャから送還された難民認定申請者もいる。

難民の受け入れは、ギリシャ、トルコ、EUだけの問題ではない。シリアやアフガニスタンから逃れる人たちは、紛争や武装グループの襲撃など、原因があって国から逃れている。この原因を作りだした、あるいは何かしら解決につながる鍵を握っている国々は、受け入れの責任があるだろう。

6月20日は世界難民の日だ。2000年に国連総会で決議されたこの記念日は、難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、国連機関やNGOによる活動に理解と支援を深める日にするため、制定された。一部の政府や組織にだけ、難民の支援を任せておくわけにはいかない。私たちも関心を持つことが必要だ。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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