天安門事件時、戦車の前に立ちはだかって無言で抵抗を示す市民。中国の民主化運動の象徴的存在となった。© Amnesty International France / Photograph © Stuart Franklin
1989年に天安門事件が発生した時は、各国メディアは中国の人権侵害に関する報道を大々的に続け、西側諸国は長期間にわたり中国へ経済制裁を課した。あれから26年になるが、中国の経済成長に伴い、国際関係は一変している。中国に対して国際社会の焦点はより経済的側面に移り、中国の人権に関する報道で大きく取り上げられることは少なくなったが、実際に天安門事件当時と比べて中国において人権状況は改善しているのだろうか。以下の8つの問題を通じて現在の中国の人権問題を考えてみる。
1.宗教に対する弾圧
政府公認の教会に従えないキリスト教信者たちは地下教会とよばれる非公認の教会活動を行っているが、これらは政府から迫害を受けている。そして法輪功は邪教として当局から激しい弾圧を受けている。
2.土地収用問題
中国では開発に際して、住民が居住している土地を半ば強制的に土地収用するケースが後を立たない。特に農村部では満足な補償も受けられない。
3.深刻化する環境問題
工場からの有害物質流出、大気汚染、自然破壊など枚挙にいとまがなく、生活環境が脅かされている。
4.農村戸籍問題
戸口問題とも呼ばれ、農村戸籍者は都市戸籍者と比べて享受できる社会的サービスが低水準であり、さまざまな面で差別を受けている。さらに農村戸籍者は都市部に移住しても、都市戸籍を得ることは難しい。そのため都市部では、戸籍に基づく学校教育などの社会的サービスを受けられない農村戸籍者で溢れている。
5.黒監獄問題
司法手続きなく警察が拘禁できてしまう労働教養制度が、国内外の批判を受けてようやく廃止された。しかし、労働教養所に替わって黒監獄と呼ばれる法的根拠の無い拘禁施設が横行するようになった。これは法に基づく刑事施設ではなく、当局が恣意的に対象者を拘束することができるということが問題である。
6.活動家への弾圧
中国では、人権活動家や人権派弁護士、民主化活動家への弾圧が依然として続いている。昨年には天安門事件に関する勉強会を開いたことにより、知識人数名が逮捕された。そのうち浦志強さんは現在も拘禁されており、拘禁が長期にわたる可能性が高い。その他、多くの良心の囚人※たちが、現在も拘禁されている。
7.少数民族の人権
ウイグル人への弾圧は日を増すごとに強くなっており、チベットや内モンゴルなどの少数民族についても厳しい人権侵害が続いている。少数民族への人権弾圧は、宗教、格差、環境、民族差別、土地収用などほぼすべての人権問題を凝縮している。
8.インターネット検閲とアクセス制限
中国においてインターネット利用者は急増したが、当局のインターネット検閲やアクセス規制は厳しく、SNSや検索エンジンの利用も限定されている。言い換えれば、政府に都合の良い情報のみが自由に閲覧できるようになっている。
以上の8つの問題から中国の人権状況について述べてみた。こうした問題を見る限り、天安門事件から月日を経た今も、中国の人権状況は改善していないと言えよう。6月4日で天安門事件は26周年を迎えるが、当時の学生指導者の王丹さんやウーアルカイシさんは亡命の身である。彼らの師であるノーベル平和賞受賞者の劉暁波さんは塀の中にいる。天安門の空は、灰色に染まっている。
※良心の囚人:信念や信仰、政治意見、人種、民族、性的指向などを理由に、暴力も用いていないのに囚われている人びとのこと
*********
アムネスティでは現在、法輪功のパンフレットを配ったことで投獄された人のためのアクション行っています。以前に受けた拷問がもとで健康状態が非常に悪くなっていますが、治療を受けられません。
▽アクションはこちらから参加できます。
(アムネスティ・インターナショナル日本)
**************************************************************
◇◆アムネスティ日本では、人権に関するさまざまな話題を取り上げた情報誌を、資料請求をされた方にお届けしています。お申し込みにはこちら◆◇
▽ アムネスティ・インターナショナル日本 公式WEBサイト
▽ アムネスティ・インターナショナル 公式Facebook
**************************************************************