新規事業やM&Aを仕掛けていく――そう考えた時、ミクシィは注目すべき選択肢の一社と言えるだろう。今後、1000億円を投資し『モンスターストライク』に次ぐ事業柱を創出していく。「既成観念にとらわれず幅広い領域で事業発案・開発を行っている最中です。今はフィージビリティの検証段階ですが、勝機を掴めるタイミングになれば一気に資金や人材を投下していきます」 同社の戦略策定に携わるキム・ジンソプさんはこう語ってくれた―。
高収益企業、利益率は約40%
長年、高収益の体質を維持し続けてきた企業――それがミクシィと言っていいだろう。
年間で生み出す純利益は、400億円以上。
営業利益率は直近4年間で約40%を推移し、現預金で1561億円を保有する(*1)。
「ユーザーに驚きを届ける。それをひたむきに目指し続けた結果、『mixi』や『モンスターストライク』のような世に残るサービスを生み出すことが出来ました。ただ、今の当社は正直なところ "成長の踊り場" にあるとも言える。だからこそ今まで以上に新規事業やM&Aを仕掛けていきますし、そこでしか得られない面白みがあるんです」
こう語ってくれたのは、キム・ジンソプさん。社長室・戦略グループのマネージャー。ミクシィの戦略策定や新規事業創出を牽引する人物だ。
そして同社には、今後3~5年間で事業開発・M&Aに1000億円を投資する計画もある(*2)。
「当事者意識を持って経営や戦略に携わっていく。そう考えた時、これほど魅力的な環境はないと感じました」
次の成長フェーズへ―ミクシィがチャレンジする5つの領域
2018年6月、新たに代表取締役社長として木村弘毅氏が就任。そして事業ドメインを「コミュニケーションサービス」であると改めて定義づけた。
同社の代表的なサービスであるSNS『mixi』の展開により、「コミュニケーション」に軸足を置きながらも、新たなプロダクトの開発を続けてきたミクシィ。
今後は具体的にどういった領域に挑戦していくのか。キーワードは「デジタルエンターテイメント」「ライブエクスペリエンス」「メディア」「スポーツ」「ウェルネス」という5つの領域だ。
「『モンスターストライク』は2013年のリリース以来、ソーシャルゲームの中では類を見ない程、長くユーザーに愛されているコンテンツと言えます。それは『モンスターストライク』が単なるゲームとしてだけではなく、アニメ・映画・イベントといったように、各種メディアやサービスを通じて、友人・知人といつでも気軽に楽しめるようになっていることが大きい。次に我々が目指すのは国民的コンテンツという立ち位置です」
そしてスポーツ、ウェルネス事業なども本格始動。
2017年にはバスケットボールBリーグ『千葉ジェッツふなばし』とのパートナーシップ締結、2018年にはサッカーJリーグ『FC東京』へ出資するなど、その領域の広さが伺える。
今後、同社は全くの異業界において、いかに戦っていく計画なのか。
「『コミュニケーション』において世の中に新たな価値を生み出していくこと、それがミクシィの得意とするところ。どの領域でも私達らしい戦い方をしていくだけです。そこに、私達の勝機がある」
コミュニケーションサービス、これが同社の事業ドメインであり、培ってきた強みだという。テクノロジーの進歩とともに、コミュニケーションの形もさらに変容していくことが予想される。しかし、同社には揺るぎない軸がある。
「人が集まってインタラクティブに交流することで、熱量が生まれる。これはオンラインでもオフラインでも同様だと捉えています。たとえば『mixi』も『モンスターストライク』も、アクティブユーザーは指数関数的に伸びている。これはユーザーが友人を誘う、その友人がまた知人を誘う...というように"親しい人と共有したい"という想いが生むバイラル型の拡散ができたからです。一見すると異業種に見えるかもしれません。しかし我々は、コミュニケーションという今まで培ってきた知見を展開させていくチャレンジをしているんです」
社長直下の組織で、戦略の中枢を担う
そういった中、重要度を増すのが社長室の存在だ。
「会社を次の成長フェーズに持っていく、これが私達、社長室のミッションです。経営戦略から事業戦略、事業開発やM&Aにも携わります」
全社を横断する組織。そのため業務の幅は多岐にわたるという。新規事業の創出においても、担う役割は大きい。
「社内からは、世の中を変えるインパクトのある面白いアイデアが絶えず出てきます。それをいかに事業化し、ミクシィとしてどのように戦っていくべきか。市場や競争環境に鑑みながら優先順位をつけつつ、戦略面からそのアイデアの体現化をしていく。社長室自ら発案して事業化していくこともあります」
時には、役員や各事業部の責任者達を巻き込んで議論することも少なくない。しかしどんなプロジェクトも、"同社の今後を左右するような業務"と言っていいだろう。
「当社の将来にかかわるような経営課題、その解消にチャレンジ・コミット出来る。コンサルティングにはない面白みがあります」
″成長の踊り場” という課題、だからこそチャレンジの意味がある
もともとPwCで経営コンサルティングに携わっていたキムさん。なぜ彼は次のステージにミクシィを選んだのか。
「次はまた事業会社で結果にコミットしていきたい。そう考えた時の最適解でした。成長の踊り場という局面。そこを乗り越えていくことにやる意味を感じたし、楽しみを見出だせると思った。誰がこの状況を変えていくか。そう考えた時に、私自身が当事者となってこの課題を解消していきたい、と感じたのです」
取材中、キムさんは ”一見華やかに見えて、地道な業務の連続でもある” とも打ち明けてくれた。しかし、その過程すら楽しんでいるようにも見える。
「そもそも私は ”働いている” と思ってやっていないのかもしれない。私にとって仕事は、ある意味、自分らしい生き方であり、ある意味で趣味でもある。自分たちが楽しんでやるからこそ、ユーザーさんにも喜ばれるサービスを生み出せる。心からそう思える環境って、そんなにないかもしれないですね」