事前の予想どおり参院選で自民党が圧勝し、民主党が惨敗して、衆参のねじれが解消されました。投票率は52%とからくも有権者の半分を超えただけで、前回、民主党に投票したひとの多くが今回は棄権したと思われます。
昨年12月の衆院選で自民党が政権を奪還し、経済運営でも結果を出しているだけに、7カ月後の選挙であえて野党に投票する理由がないのは当然です。参議院がなければ最初からこうなっていたわけで、安倍政権はいよいよその真価を問われることになるでしょう。
以下、今回の選挙で気づいたことを列挙してみます。
(1)参議院はそもそもいらない
半年以上も不毛な議論を繰り返し、選挙を経ないと正常化できないなら最初からない方がマシ。有権者の判断は昨年の12月にすでに出ている。
(2)反原発は票にならない
"被災地"の福島ですら「反原発」を掲げた候補者はまったく相手にされず。議席を獲得できたのは共産党候補と東京選挙区の山本太郎だけ。
(3)反TPPは信用されない
「TPP反対」を掲げる政党は共産党を除いて全滅。安倍政権がTPPに参加した以上、いまさら反対しても意味がないと見透かされた。
(4)憲法改正は投票に無関係
「平和憲法護持」を掲げた政党も共産党を除いて全滅。その共産党は、かつては憲法改正と天皇制廃止を主張していた。
(5)"リベラル"勢力は共産党に結集した
自民党政治に反対するひとは、もっとも主張のわかりやすい共産党に投票した。歴史的にリベラリズムは共産主義と対立してきたが、日本では共産党がリベラルの代表となった。
(6)労働組合は票を集められない
民主党の頼みの綱である労働組合はサラリーマンと公務員のための組織。非正規社員の数が4割に達し、今後、ますます増えていくことが確実ななかで、正社員の既得権を守るのに汲々とする労働組合は共産党や創価学会よりも集票できなくなった。
(7)民主党(野田政権)の政策は自民党に取り込まれた
TPP参加も消費税増税も民主党が言い出したこと。民主党は過去の自民党政治を全否定しようとして失敗したが、安倍政権は民主党の成果を上手に利用している。
(8)やっぱりみんなネオリベになった
野党で共産党以外に票を獲得できたのは"ネオリベ"の政党のみ。民主党も、小沢一郎が出て行ってネオリベが主流派になった(その小沢一郎こそがネオリベ=新自由主義の元祖だった)。安倍政権もネオリベといわれているのだから、今回の選挙で、衆参ともに日本の政治はネオリベ一色になった。
リベラルが退潮してネオリベが勢力を伸ばすのはヨーロッパも同じで、これが"グローバルスタンダード"。ネオリベもまたリベラリズムである以上、「自由」や「平等」という近代の価値を擁護します(反原発や平和憲法護持のネオリベがあってもおかしくありません)。
いま起きていることは、オールドリベラルが生み出した福祉社会が機能不全になった時代の必然です。日本の政治は今後、「保守的なネオリベ」と「現実的なネオリベ」に二極化していくことになるでしょう。
(『週刊プレイボーイ』2013年7月29日発売号の連載記事を転載しました)