21世紀の冷戦は「海底ケーブル」を巡る攻防になる?

プーチン大統領の野望の一部だという。
ERDF (Electricity Network Distribution France) and Louis Dreyfus company install an electric submarine cable and optical fiber between Quiberon and Belle-Ile-en-mer, western France, on March 11, 2015. The underwatered power line of 15km is installed by ERDF to connect the Brittany island of Belle-Ile-en-mer inhabited by 5000 people. AFP PHOTO / JEAN-SEBASTIEN EVRARD (Photo credit should read JEAN-SEBASTIEN EVRARD/AFP/Getty Images)
ERDF (Electricity Network Distribution France) and Louis Dreyfus company install an electric submarine cable and optical fiber between Quiberon and Belle-Ile-en-mer, western France, on March 11, 2015. The underwatered power line of 15km is installed by ERDF to connect the Brittany island of Belle-Ile-en-mer inhabited by 5000 people. AFP PHOTO / JEAN-SEBASTIEN EVRARD (Photo credit should read JEAN-SEBASTIEN EVRARD/AFP/Getty Images)
JEAN-SEBASTIEN EVRARD via Getty Images

インターネット上のデータの95%以上が、約200本の海底ケーブルを伝わって行き来している。情報は深い海の底を通って世界中に届けられているのだ。一部のケーブルはエベレストの高さほど深い海底にある。世界経済の基幹となっているのは、この光ファイバーで保護された情報だ。

この海底ケーブルにロシアが関心を持っている、と様々な情報筋が明らかにしている。報告書によれば、ロシアが海底ケーブルを監視・攻撃しようと計画している。理由は明らかだ。海底ケーブルを自由にできれば、西側諸国との緊張が高まった場合、機密情報を握って敵国の経済に大きな混乱を与えられる。またロシア海軍にとって有利な状況を作ることもできる。

ロシアの最近の行動を見れば、なぜ海底ケーブルを狙うのか理解できる。第一に、アメリカに対抗する国になりたいと望むロシア国民の歓心を買う。ロシアのプーチン大統領は国際的な注目を集めたいと願っている。彼はこれまでにジョージア(旧グルジア)を侵略し、クリミアを併合し、シリア紛争に介入してアサド政権を支援してきた。海底ケーブルを監視下におけば、自身の国際的な重要性を高め、注目を集められる。

情報は経済システムの生命線だ。事故や攻撃から守る必要がある。

第二に、ロシア海軍にとって重要な訓練になる。報告書によるとケーブルを盗聴したり、正確に攻撃したりするには高い技術と緻密さが必要だ。ケーブルを手中に収めるためには訓練が欠かせない。

ロシア軍の海中演習は、アメリカや同盟国に警告を送ることになるだろう。NATO加盟国(特にバルト諸国)上空を長距離爆撃機で偵察したり、北極で軍事力を強化したりと、ロシアは冷戦時代のような行動をとっている。海中演習はそれと同じような影響を西側諸国に与えるだろう。

我々は冷戦時代に逆戻りしているのだろうか? ロシアは不穏な動きは気になるが、おそらくそうではないだろう。ロシアとアメリカは、様々な分野で協力している。ソマリア沖での海賊パトロール、テロ対策の情報共有、中央アジアでの反麻薬活動、アフガニスタン支援、物議を醸しているイランとの核合意。この関係は冷戦時代にはなかった。

空の安全や海の安全を守るのと同様、海底ケーブルを保護するためにロシアを含めた国際的な話し合いが必要だ。

冷戦時代に比べれば、現在の対立の規模は小さい。冷戦中、ソ連とアメリカの兵士たちはドイツの峡谷地帯フルダ・ギャップでにらみ合った。世界中の海で艦隊が闘いを繰り広げた。数分以内に核兵器が発射できるような一触即発の状態だった。現在の状況はそれほど危機的ではない。

それでは、ロシアの行動にどう対応すればよいのだろうか? 私たちは、新たな冷戦を避けなくてはならない。そのためには、開かれた関係を維持し、北極の軍事強化から軍備管理まで協力できる分野を探し、挑発的な行動に対して冷静になる必要がある。空の安全や海の安全を守るのと同様、海底ケーブルを保護するためにロシアを含めた国際的な話し合いが必要だ。

一方で、国際法の原則には従わねばならない。ウクライナのように隣国の領土を併合することは許されない。シリアのアサド大統領のような残忍で違法な体制を支持してはいけない。国際的に団結し、ウクライナのような事態が起こった場合は制裁を課すべきだ。

配電網や産業基盤、交通網を守るのと同じように、アメリカ海軍は海底ケーブルを守らなければいけない。

軍事的な準備も欠かせない。配電網や産業基盤、交通網を守るのと同じように、アメリカ海軍は海底ケーブルを守らなければいけない。そのためには、海底で高度な技術と能力を発揮できる強い海軍が必要だ。海底での軍事技術でアメリカは世界をリードしている。これを維持する必要がある。

同盟国や友好国との軍事的な協力関係は、ロシアとって警告となる。NATO加盟国や、日本、オーストラリア、その他多くの友好国も海底軍事技術を持っている。彼らと共同軍事演習をすることで、グローバルな通信網を安定・保護できる。

最後に、海底ケーブルネットワークに回復力と余裕を持たせる必要がある。比較的浅い場所にあるケーブルは、特に攻撃にさらされやすい。いざという場合に備えて予備のケーブルがもっと必要だ。情報は経済システムの生命線だ。事故や攻撃から守る必要がある。

いざという場合に備えて予備のケーブルがもっと必要だ。

冷戦時代のようなロシアの行動は私たちを不安にさせる。しかしロシアには弱点があることを忘れてはならない。人口減少、高いアルコール依存症率と薬物乱用率、本当に同盟関係にある国はわずかで、経済は単一産業に依存している。多少の誇張はあるが、ジョン・マケイン上院議員が述べているように、ロシアは「国家という仮面をつけた大規模ガスステーション」なのだ。

そういった弱点を抱えつつも、自国の重要性を強調するため、プーチン大統領の指揮下でロシア冷戦時代のように振舞うだろう。しかし、思い通りの筋書きにはならない。我々は過剰に反応するのではなく、分別のある対応をとるべきだ。対話を維持し、可能な限り協力し、必要な場合には対立する。そうして海底ケーブルも含めた、世界中の重要なインフラと利益を保護しなければならない。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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