Facebookの性別欄は58種類
LGBTという語が説明無しに使われるようになった。
一方でXジェンダーという語や、LGBTsやLGBTQという総称も目にする。
Xジェンダーは性自認が男女どちらでもない、どちらでもある、不明または流動的な人。
LGBTsの「s」はLGBTには含まれないセクシュアリティを含む複数形。
LGBTQの「Q」は、Questioning=性自認や性的指向に疑問がある人、決まっていない、決めたくない等の人、Queer=既存の性別の枠や規範にとらわれない生き方の人、・多様な性的マイノリティの総称としても使われる。
こう書いても重複する部分があるし、LGBT当事者もはっきり4カテゴリーに分けられるものではない。
セクシュアリティは個々に異なる。
筆者がNY駐在時に行った病院の問診票の性別欄は男性/女性/その他(other)だった。
そして、Facebookアメリカ版の性別欄には58種類の記載がある。
Female to Male(身体は女性で性自認は男性)、Gender Variant(既存の性分類に当てはまらない)等々(日本版では「カスタム」を選び自由に記入)。
Facebookによると、これは2014年に設定したもので「トランスジェンダーの方々や男女という性別にあてはまらない方々が、フェイスブックというプラットフォームで自分のありのままのアイデンティティを表現することを応援しています」とコメントしている。
日本では人事採用のESに性別欄を設けない企業が出てきた。性別による差別の排除や、LGBT、特にトランスジェンダー当事者への配慮と言える。
「まだ、世の中には男性と女性しかいないと思っていませんか?」
「無性」のダンサーが語る「性」
ダンサーDancingLuckyBoy,SOUSHIN想真さんは「無性」だ。
性自体が無い、男と女というものが自分の中に無いのだ。
「覚えているのは、幼稚園の時に男女別に整列するよう言われて、なぜ分けるんだろう、って疑問だった。並ばされたけど、こっちじゃない!と思った。でももう片方の列も違うと思った。分けられることがすごく気持ち悪くて、でも男女しかないと思い込まされていたから、その気持ち悪さを伝えることもできなかった」
想真さんは幼い頃、言葉をほとんど話さず、発達障害と診断されている。
いちばん辛かったのはトイレだ。
「男子トイレにも女子トイレにも入れなくて、よく自分の席でおもらししました。今は多目的トイレが増えたので安心です」
学校は保健室登校。でも外へ出れば「男?女?どっち?」と聞かれる。
次第に引きこもるようになった。男女どちらかにならなければ生きていけない、それは無理だ、と何度も自死を試みた。
「でも、この地球上で誰も性別を気にしないなら死にたくないな、と」
生きてゆくため、想真さんは対外的には「男」になることにした。
「楽になりました。男です、と言えば相手は安心してそれ以上聞いてこない」
ある日TVで性同一性障害を知り、自分もそうではないかと医師のチェックを受けた。
そこで言われたのが「君は性同一性障害の『無性』だね」。
「おお、これだ!と。『無性』は今まで聞いた言葉の中でいちばんしっくりきました」
性同一性障害という語が世に認知されたことで少し救われた。
しかし、周囲が「男女の心と身体が一致しない障害」だと認識していたことで「男女どちらでもない」想真さんは更に苦しむ。
「今はプロフィールに『無性別』と載せています」
男女の間の中性ではなく、無性。
恋愛に関しても、尊敬や憧れの念を抱くことはあるけれど、誰かに恋愛感情を抱いたことはない。
「Xジェンダーですよね、と言われることもありますが、調べると<男女どちらもある、どちらでも無い、悩んでいる、流動的>とある。
僕、悩んでないし、揺れてもいない。そもそも男女が無いんだから(笑)それに男女が有る話と無い話を同じ括りにするのはどうなんだろう? だから『無性』って言います。
でも『無性とはこういうもの』と言ってしまうのも抵抗がある。これは『僕の無性』のお話。みんないろいろ」
男性女性以外の性を知ってほしい
ダンサーとして海外公演も行うなど活躍中だ。しかしパスポートを出す時はやはり悔しい。今の日本の表記では性別に縛られる。
「でも、今は男でいい。無性を解ってもらうには時間がかかる」
とはいえ、初対面の人から勝手に性別を判断されるのは今も苦手だ。
無性だと説明しても「で、本当はどっちなの?」と聞かれてしまう。
「みんな男女の2択しか無いと思っていて、そこに当てはめようとする。『本当はどっちなの?』と。でもその『本当』って何だろう?きっと戸籍や身体のことを聞きたいんだろうけど、僕にとっての『本当』は『無性』です」
オーストラリアやニュージーランド、ドイツ、デンマーク、カナダ等のパスポートは性別欄を「X」とすることができる。
最高裁により第三の性が認められた国も増えてきた。
男性女性以外の性があることを、より多くの人に知って欲しい。
☆想真さんも出演しているLGBTs当事者の声を集めた映画『私はワタシ~over the rainbow』は、全国の小中高校に教材として無料配布することを目指し、クラウドファンディングを実施中だ。
「全国の子どもたちに見て欲しい。僕は小さい頃に男女の性別しかないと思い込まされていた。男女以外もあるんだ、性別は選べると知ってもらいたいし、自分は違うって言っていいんだよ、と伝えたいです」
『私はワタシ~over the rainbow』
☆DancingLuckyBoy,SOUSHIN想真Website
公演情報「狐舞~Crying Road」
(2018年5月20日FNN PRIMEより転載)