日本の人気女性アイドルグループが1月27日、アジア各地でコンサートを開催した。
「AKB48」はタイの首都バンコクで海外姉妹グループ6組と共演。「乃木坂46」は、台湾の台北で2018年12月に続く2回目の海外公演をした。「ももいろクローバーZ」(ももクロ)は26日に台北、27日に中国・上海という弾丸ツアーを実施した。日本のアイドルが、アジア各地でイベントを展開する背景には何があるのか。その経緯を探った。
■AKB48と海外姉妹グループ6組がバンコクで集結
まず、現代の女性アイドル人気のきっかけを作ったAKB48。2018年末の「第69回NHK紅白歌合戦」では、タイ・バンコクを拠点とする姉妹グループ・BNK48と合同で、言語の壁を超えたパフォーマンスを披露した。
サンスポによると、そのAKB48と海外を拠点に活動する姉妹グループたちが27日、タイ・バンコクで「AKB48 グループアジアフェスティバル」を開催した。
AKB48をはじめ、ジャカルタのJKT48、バンコクのBNK48、マニラのMNL48、上海のTeamSH、台北のTeamTP、ホーチミンのSGO48の7つのグループが一同に集結するという、初の試みとなった。
1万2000人を動員したイベントを終えた総監督の横山由依(26)は、「これを機に一つになって、AKB48グループみんなで盛り上げていきたいです」と語った。
■AKB48と海外姉妹グループ6組がバンコクで集結
続いて、そのAKB48の公式ライバルとして結成された乃木坂46。
2017年、2018年とレコード大賞を2年連続で受賞し、出版されたメンバーの写真集も重版が繰り返されるなど、今一番勢いのある女性アイドルグループも27日夜、台北市内の台北アリーナ(1万5000人収容)で、台湾での初公演を行った。海外での単独ライブは、2018年12月の上海に続いて今回は2回目だ。
共同通信によると、コンサートでは、選抜されたメンバー約20人が「君の名は希望」や「何度目の青空か?」など、約30曲を歌った。
また、日刊スポーツによると、この日のライブで全32曲中15曲でセンターを務めた齋藤飛鳥は台湾の人気作品のリメークで、昨年10月に日本、11月に台湾で公開された映画「あの頃、君を追いかけた」でヒロインを演じていたこともあり、大歓声を浴びたという。
今回ライブに参加したメンバーの1人の山崎玲奈は、公式ブログで中国語で感謝を綴った。
■ももクロは台北、上海で連続公演
最後に、ももクロ。1月26日に台湾・台北のレガシー台北、翌27日に中国・上海の万代南夢宮文化中心でライブを開催した。
台湾公演の一部は、世界で6000万人以上のユーザーを抱えるグローバルライブ配信アプリ「Uplive」で生配信され、現地に足を運べない「モノノフ」と呼ばれる数多くのファンたちにもライブを楽しんでもらった形だ。
■女性アイドルグループのアジア進出 専門家の見方は?
なぜ同日に彼らがこぞってアジアでライブを開催したのか、これらの女性アイドルグループのアジア展開の背景には何があるのか?
ハフポスト日本版編集部は、アイドル評論家の高倉文紀さんに聞いた。
「欧米では、日本のアニメのファンは数多くいるものの、カルチャーとしての『女性のアイドル文化』への関心がまだそれほど高くない現状があります。ももクロやAKBは、過去にはアメリカやフランス、ロシアなどでパフォーマンスを披露しました。そこでは一定以上の盛り上がりを見せましたが、その後は、うまく人気を定着させる戦略が取れていないのです」
一方で、盛り上がりを見せるアジア市場については、こう話した。
「同日にライブを行ったことはさすがに偶然かもしれませんが、今、各グループの陣営はアジアに特に力を入れている印象です。そもそもアジア市場は、70年代から80年代にかけて、酒井法子さんなど当時の人気アイドルたちが進出していました。日本の女性アイドル雑誌のアジア版が出来たのもこの頃です。時間をかけて土壌が作られていた為、現代のアイドルが進出しやすい環境が既に整っているというのは、欧米との大きな違いです」
加えて、魅力の発信の手法が変わったことが大きいと指摘する。
「動画配信やSNSの影響はかなり大きいと思います。これまでの時代とは違って、メンバー自身が自らの魅力を発信できるようになった。例えば、乃木坂46は投稿やフォロワー数が大きな影響力を持ったとして、中国のソーシャルメディアから表彰を受けるなどもしています。動画配信やソーシャルメディアをどう活用するかが大きな鍵となると思います」
最後に、今後の日本の女性アイドルの海外進出について聞いた。
「今は全体的にアジア市場に舵を切っている印象がありますが、このアジアに注力する戦略のままではいけないと思います。ワールドワイドな存在になっていくためにどんな戦略を立てられるか、各グループも常に先を見据えた戦略をいかに立てていけるか、それが今後の課題になると思います」
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彼女たちのアジア戦略は、あくまでも世界を見据えた上での「過程」に過ぎない。まだ存在が知られていない世界にその名を轟かせるために、彼女たちの挑戦は続く。