ロシアが北方領土を日本に引き渡すことについて、当のロシア人たちはどう思っているのか。モスクワの政治家が1月上旬、Twitterで「世論調査」をしたところ、賛成が4割近くに上った。
調査をしたのは、モスクワ在住で、野党「ヤブロコ」の地方議員マクシム・カッツさん(34)。
カッツさんは1月9日、Twitterの投票機能を使い、「クリルの2つの島を日本側に引き渡し、平和条約を結ぶことについてどう思うか」と投稿した。クリルは北方領土を指すロシア側の呼び名だ。
1469票が寄せられ、「賛成」が37%を占めた。「反対」と回答したのは31%で、「どちらでもいい」が32%だった。
コメントは44件ついており、いくつかを紹介する。
「賛成してもいいが条件がある。巨額な金を支払うことだね。あるいは別の大きなメリットがないと。平和条約については単なる紙切れだ」
「大いに賛成。そこに住む住民は暮らし向きがよくなるチャンス」
「もちろん反対。平和条約だけを締結するのも反対。歴史が何度も証明するように、両国の間に平和条約がないからといって問題はなかった」
「条件付きで引き渡そう。例えば、サハリンのインフラを全部整備してくれたら、とか。ロシア本土につながるトンネルや橋もね」
「クリミア併合を認めたらね。あとシベリアと極東に200億~300億ドルの投資をしてくれたら」
「私は長いこと賛成している。だけどプーチンは私が反対していることばかりやっている」
若者意識は変化?
一方、ロシアの民間世論調査機関「レバダセンター」も2018年11月下旬、北方領土を日本に引き渡すことについて賛否を問う世論調査をロシア各地で実施。回答を得た計1600人のうち、17%が「賛成」と答えた。
レバダセンターによると、前回調査(2016年5月)は7%だったという。同様の調査は1992年から続けているが、「賛成」の割合はこれまで12%を超えたことがなく、今回が最も多かった。
レバダセンターは、日本に対するロシア人の好感度が高まっていることが背景にあると分析。2017年の調査で「日本にいい印象を持っている」と答えた人は48%だったが、2018年の調査ではその割合が61%に上昇しているという。
領土問題に対する関心も高く、関連のニュースについては、19%の回答者が「注視している」と答え、49%が「詳しくはないが知っている」と答えた。
日本側に島を引き渡すことに賛成する人が増えていることについて、政治学者ドミトリー・ストレリツォフ氏は地元紙「エル・ベー・カー」に対し、若者の意識の変化を指摘する。
「若者はよりグローバルな考えになっていて、妥協する姿勢を持っている。国際社会との関係をよくしたいと思っているし、冷戦や第2次大戦から引きずっている問題を気にしているわけでもない。1956年宣言で求められているソ連の義務を知っている高学歴の人たちも増えている」
一方で、島の引き渡しに反対する人が依然、多いことについて、レバダセンターの社会学者カリーナ・ピピヤ氏はこう分析する。
「ロシアの領土一体性に関しては、クリミア半島であれ、クリルであれ、大多数のロシア人が返したくないと思っている。ロシア国民の誇りにとって最も重要だからであり、世界に向けて『暮らしは苦しいけど、その代わりに私たちには巨大な国がある』という雄大さや力を見せつけたい思いがある。領土を引き渡すことは弱さの兆候だと考えている」