なぜ「辺野古署名」は世界に広がるのか? アメリカ在住ジャーナリストが分析する理由

辺野古埋め立て工事の停止を求める署名に20万筆。津山恵子さんが分析した。
アメリカで声をあげるロバート・カジワラさん
アメリカで声をあげるロバート・カジワラさん
津山恵子さん提供

沖縄県名護市の辺野古の新基地をめぐる署名運動が世界的に広がっている。2018年末にはタレントのローラさん、りゅうちぇるさんらが署名を呼びかけ、今年(2019年)に入ってからQueenのギタリスト、ブライアン・メイさんも呼びかけた。

署名は米ホワイトハウスの請願書サイトを通して行われ、辺野古埋め立ての工事を停止するよう、トランプ米大統領に求めるもの。目標の10万筆をこえ、20万以上が集まった。

なぜ、海を越えて、ここまで広がったのか。ニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子さんがNewsXのネット番組「ハフトーク」で語った。

津山恵子さん提供
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HuffPost Japan

ハワイから声があがった「辺野古署名」

辺野古についての署名を広げたのは、ハワイ在住で沖縄にルーツがあるロバート・カジワラさん。カジワラさんを取材した津山さんは、署名は「民主主義」という観点から考える必要があると指摘する。

「土砂投入によって沖縄の人の気持ち、(知事選などで)示したはずの民意が軽視されている」ことに根本的な問題があること。そこを訴えることによって、署名は広がったという分析だ。

加えて、土砂投入により沖縄の青い海に砂が広がっていく写真、映像も衝撃があった。

元防衛事務次官の守屋武昌氏が、辺野古新基地建設の経緯を詳細に記した『「普天間」交渉秘録』(新潮社)にこんな一節がある。

時の小泉純一郎首相が漏らした一言だ。

「環境という言葉に国民は弱い。環境派を相手に戦っては駄目だ」

政府は基地建設が環境問題になることを恐れていたことが、うかがえる。今の安倍政権は県民投票前に土砂を投入し、既成事実化を進める。

(Photo: Richard Atrero de Guzman/ Nur Photo) (Photo by Richard Atrero de Guzman/NurPhoto via Getty Images)
(Photo: Richard Atrero de Guzman/ Nur Photo) (Photo by Richard Atrero de Guzman/NurPhoto via Getty Images)
Getty Editorial

ネット署名は政治を動かせるのか

その中でアメリカ政府に向けた署名運動は本当に効果があるのか。津山さんは語る。

「土砂を投入しているのは日本の政府なので、トランプ政権としては『これは日本の国内問題』とするのが基本姿勢ではないかと思う」

アメリカ政府に大きな影響を与えることについて、期待はできない可能性があることを指摘した。

だからといって無意味かといえばそうではない。重要なのは、インターネットを使って「諦めないという気持ちを示すことができた」ことだ、と津山さんは話す。

「ロバートさんたちのグループは、(2月24日に予定されている)県民投票に向けて請願署名のアップデートを続けるでしょう。彼らは県民投票に何らかの影響を与えたいと思っている」

津山さんはネット上での盛り上がりを維持するために必要なのは、当人たちだけでなくメディアの問題でもあるという。

「彼らの動きは、確かにネット上でバズっています。しかし、現在のインターネットでバズる状態を維持し続けるのは難しい。辺野古について声を上げている人がいると伝え、この盛り上がりを維持できるかどうか。これはメディアやジャーナリズムの責任だろう」

2月24日に予定されている県民投票に向けて、署名運動はどのように影響を与えるのか。動きは続きそうだ。

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