フォトジャーナリストの広河隆一氏が、職場に出入りしていた女性7人に性行為やヌード写真の撮影などを要求していたと、12月26日発売の週刊文春が報じた。
広河氏は記事の中で事実の一部を認めたものの、"強要"は否定した。これに対し、女性たちから相談を受けたというメディアのセクハラ問題を考えるグループがFacebookで抗議声明を発表した。
この投稿は拡散しており、報道写真界の大御所に対する批判はさらに強まりそうだ。
抗議声明を出したのは「メディアにおけるセクハラを考える会」。代表を務める大阪国際大の谷口真由美准教授が12月26日、自身のFacebookページに投稿した。
それによると、谷口さんらは今回被害を告発した女性たちから「直接相談も受けており、告発内容が事実であると信じるに足る情報を得ています」と公表した。
広河氏を「人権派のフォトジャーナリストを標榜していた人が、身近にいる女性の存在、そして人権をあまりに軽んじてきた」と批判した。
特に、広河氏が文春の取材に「(女性たちは)僕に魅力を感じたり憧れたりしたのであって、僕は職を利用したつもりはない」などと反論したことについて、「到底看過することができません」と反発。「メディアにおけるセクハラが、仕事の性質により、ホテルなどの密室を利用して、呼び出されたら行かなければならないという慣習を利用して行われていることが明らかになりました。それは広河氏がセクハラを行った状況と、見事に合致しています」と指摘した。
告発した女性たちに対しては、「二次被害がこれ以上拡大することのないよう、#MeToo を合言葉に、被害をひとりで飲み込んでいた人に、『あなたは一人じゃない』と寄り添い、連帯する言説を日本社会で広げていきたい」と訴えた。
文春はどう報じた?
広河氏は2004年、報道写真誌「DAYS JAPAN」を創刊(2019年2月に廃刊予定)した、世界的に知られるジャーナリストだ。
週刊文春の報道では、2007年~2017年頃にかけて編集部にアルバイトなどで出入りしていた女性7人が、広河氏から性暴力やセクハラの被害を受けたと証言している。
フォトジャーナリスト志望だったある女性は2007年~2008年頃、広河氏から「キミは写真が下手だから教えてあげる」とホテルの部屋に来るよう指定されたという。女性は広河氏を信頼していたが、記事によれば「あっという間にベッドに移動させられ、抗えないままセックスが終わった」。行為後、裸の写真を撮影されたこともあったという。
記事では「編集部で広河氏に『彼女にならないか』と言われた」といった証言の数々も紹介。広河氏が女性を傷つける行為を繰り返していたと報じている。
メディア業界のセクハラ問題とは?
2018年4月、週刊新潮が財務省の福田淳一・前事務次官による女性記者へのセクハラ疑惑を報じたことをきっかけに、メディアで働く女性へのセクハラ被害が次々と明るみに出た。
これを受け、谷口さんや現役の女性記者らが「メディアにおけるセクハラを考える会」を発足させた。SNS上などを通じて被害実態を調査し、2018年5月には、150のセクハラ事例を報告した。