我らがINFOBARが遂に帰ってきます。新モデルは「INFOBAR xv(インフォバー エックスブイ)」。初代モデル発売から15周年を記念したモデルです。製品名の「xv」はローマ数字の15を表しています。
そもそも「INFOBAR」って何?
「INFOBAR xv」のレビューに入る前に、INFOBARの歴史を少し振り返ってみましょう。白黒色の地味なデザインやふたつ折りケータイが主流だった2001〜2002年、携帯電話をデザインで変革させるべく、『au Design project』という取り組みが始動しました。その第一弾として、2003年10月に発売されたのが、「INFOBAR」の初代モデルです。
プロダクトデザイナーの深澤直人氏がデザインを担当し「INFOBAR」初代モデルは、鮮やかな色彩とタイルキーを特徴としたそれまでに類を見ないデザインから話題を呼びました。
その後、2007年に後継モデルの「INFOBAR 2」が登場。コンセプトは引き継ぎつつも、飴玉のように丸みを持たせた新しいデザインから再び評判を集めました。また、このモデルはワンセグ視聴用のアンテナを、世界で初めて搭載したことでも話題となっています。
▲「INFOBAR 2」の実機
この後、『au Design project』は、2009年に「iida(イイダ)」という新しいブランドに継承されました。「iida」は「innovation」「imagination」「design」「art」の頭文字を取った名称で、このブランドからは、「INFOBAR」以外にもスケルトンデザインの「X-RAY」や鮮やかなイルミネーションを備えた「LIGHT POOL」など、様々な「デザインケータイ」が登場されました。
2011〜2015年にかけては、スマホが主流になったこともあり、「INFOBAR」からも、タッチパネルを搭載したモデルが登場しました。
▲スマートフォンとなった「INFOBAR A01」の実機
これでもまだ話し足りない部分もある程、「INFOBAR」は歴史も長く、固定ファンも多い携帯電話ブランドなのです。
「INFOBAR xv」の外観をチェック
▲「INFOBAR xv」のカラーバリエーションは、「NISHIKIGOI」「NASUKON」「CHERRY BERRY」の3色
▲「INFOBAR xv」のデザインに合わせたパッケージも美しい
▲「Suica」や「au WALLET プリペイドカード」よりも本体幅が抑えられています
続いて、2007年に発売された「INFOBAR 2」と2018年の「INFOBAR xv」を比較していきます。
▲前面。左が「INFOBAR 2」、右は「INFOBAR xv」
同じタイルキーですが、「INFOBAR xv」は画面サイズが大きくなったことで、「INFOBAR 2」よりもタイルキーが縦方向に狭められています。特に方向キーは押しづらいと感じました。
▲背面。左が「INFOBAR 2」、右が「INFOBAR xv」
どちらもINFOBARでは象徴となっている「NISHIKIGOI」というカラーですが、見比べてみると色味が違うことがわかります。「INFOBAR 2」がつややかな光沢のある赤色をしているのに対して、「INFOBAR xv」は渋くて落ち着きのある、朱色に近い赤色となっています。
▲上部。左が「INFOBAR 2」、右が「INFOBAR xv」
▲下部。左が「INFOBAR 2」、右が「INFOBAR xv」
そのほか、旧モデルからの改善点として、「INFOBAR xv」では、充電端子の部分がキャップレス仕様になっています。充電やパソコンと接続する際は、microUSBのケーブルを使います。
▲上が「INFOBAR 2」、下が「INFOBAR xv」の左側面
▲右側面。上が「INFOBAR 2」、下が「INFOBAR xv」
「INFOBAR xv」では左右の側面が旧モデルよりもスッキリしていて美しいです。右側面には、SIMカードとmicroSDカードを挿入するためのトレイが内蔵されています。ストラップの穴もあるので、首からさげて持ち歩けます。
▲オリジナルのSIMピンが同梱されています
▲SIMピンの他には、取扱説明書や設定ガイドなどの冊子類、卓上ホルダも同梱されています
▲「INFOBAR xv」を卓上ホルダで充電する様子。縦向きと横向きで画面の表示も変わります
INFOBAR xv の機能をチェック
本機のメーカーは、タフネススマホ「TORQUE」も製造する京セラです。ディスプレイは約3.1インチで、800×480ドット(WVGA)の表示が可能な、TFTカラー液晶を搭載しています。タッチパネルは搭載おらず、全ての操作を物理キーで行います。スマホに慣れた人は、違和感を覚えるかもしれません。背面のメインカメラは約800万画素。インカメラは非搭載となっています。
以下は写真の作例です。比較対象として、同じ約800万画素のカメラを搭載した京セラ製のケータイ「GRATINA 4G」(2016年発売)で撮った写真を用意しました。「INFOBAR xv」で撮影した写真の方が旧機種よりもクリアで綺麗な仕上がりとなっています。
▲左が「GRATINA 4G」、右が「INFOBAR xv」で撮影した写真
メモリー(RAM)は1GB、ストレージ(ROM)は8GBのを内蔵しています。外部メモリーは最大32GBまでのmicroSDHCカードに対応します。
通信は理論値で下り最大150Mbpsの「4G LTE」。高音質通話「VoLTE」や「au世界サービス(UMTS/GSM)」にも対応します。Wi-FiはIEEE802.11b/g/n、Bluetoothは4.1をサポートします。Wi-Fiテザリングは最大10台まで接続可能です。
コミュニケーションツールとして、au独自の「Eメール/Cメール」はもちろん、「LINE」や「+メッセージ」などにも対応します。このあたりは最近のトレンドをしっかりと抑えており、評価したいところです。
バッテリー容量は1500mAh。連続待受時間は約530時間、連続通話時間は約600分となっています。
筆者が一番気にしていたいわゆる日本向け機能(ワンセグ・フルセグ、おサイフケータイ・NFC、赤外線、防水・防塵)は残念ながら全て非対応となっています。
この点について、「INFOBAR xv」の企画を担当したKDDI株式会社 商品・CS統括本部 プロダクト企画部の砂原哲氏に聞いたところ、「これらの日本機能をINFOBARに詰め込むと、設計スペースが足りず、スマホよりも太くて分厚くなってしまう。歴代モデルのサイズを維持するべくこの形に収まる機能を搭載した。全部入りを実現したかったのは本音だが、本体の持ちやすさや軽さ、機種変更時のデータ移行に役立つmicroSDHCカードの搭載を優先した。」と話していました。
「INFOBAR xv」ならではの機能
「INFOBAR xv」とスマホをBluetooth経由で接続して、SiriやGoogleアシスタント呼び出せる「スマホ音声アシスタント呼出機能」も搭載しています。
iPhoneやiPadではSiri、AndroidではGoogleアシスタントを「INFOBAR xv」からリモートで起動できます。カバンやポケットからスマホを取り出すことなく、天気情報やスケジュールの確認などを行えます。2台目として本機を購入したら是非、使ってほしいと感じた機能です。
また、INFOBAR xvには、遊び心のある機能も搭載されています。
INFOBAR xvの発売前に、KDDIはクラウドファンディングを展開。その出資者に対して、端末内に記録されるクレジットに名前を記載する特典や、限定生産の専用オリジナルケースを提供する特典などを用意していました。
そのうち、3240円(税込)の「INFOBAR xvのクレジットタイトルにお名前をクレジット」コースに申し込んだ人には、出資者だけに明かされた隠しコマンドを本機に入力することで、端末内でクレジットを表示できます。
つまり、「隠しコマンド」入れるとINFOBAR xv上に自分の名前が表示される」というユニークな機能です。
INFOBAR xv の使い道
ここまで、歴代モデルと比較しつつも、「INFOBAR xv」の良さを探ってみましたが、先述の独自機能を備えていることからも、本機のターゲットはスマートフォンの2台目として持ちたい人だと推測されます。
では、実際に二台持ちしたら、どんな使い方ができるのかを考えてみます。
auユーザーの場合、これまで3G・4Gケータイの1台持ち、または、スマホ+ケータイの二台持ちであれば、「INFOBAR xv」への移行もスムーズです。スマートフォンの1台持ちにこだわるという人には悩ましい選択肢ですが、「INFOBAR xv」を通話専用のケータイとして追加する使い方もあります。
auの「4G LTEケータイ」向けに用意されている料金プランは大きく分けて3つあります。
① 24時間の国内通話がかけ放題になる「カケホ(ケータイ)」、は月額2200円(税別)で使えます。
② 1回5分以内の国内通話がかけ放題になる「スーパーカケホ(ケータイ)」なら月額1200円(税別)で使えます。
③ かけ放題が不要であれば無料通話の付いたプランもあります。
SIMロック解除も可能なので、SIMカードのサイズや通信規格などの条件が合えば、他社のSIMカードを挿して利用することも可能です。
このように、「INFOBAR xv」の現実的な使い方や可能性を色々と考えてみるのも楽しいです。
なお、auの3Gサービス「CDMA 1X WIN」は2022年3月末のサービス終了が予告されています。これを機にINFOBAR xvに乗り換えるというのも1つの選択肢かもしれません。
平べったい板状のスマホが主流の今だからこそ「INFOBAR xv」のような製品が注目されているのでしょう。今後もauが独創的なオリジナルケータイを発売することを期待しつつ、このレビューを終えたいと思います。
(2018年11月19日TechCrunch Japan「15年分の愛が詰まった「INFOBAR xv」は最高だ!」より転載)
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