ガス欠で立ち往生していた女性を救うために、ホームレス男性がなけなしの20ドルでガソリンを購入してくれた...。そんな「できすぎた美談」を作り上げて同情を誘い、約40万ドル(約4500万円)もの寄付金をだまし取ったとして、詐欺などの疑いで3人が訴追された。ニュージャージー州バーリントンの検察事務所が11月15日に発表した。
発表によると、"助けられた女性"のケイトリン・マクルーア被告人とその交際相手マーク・ダミコ被告人、"助けたホームレス男性"のジョニー・ボビット・ジュニア被告人の3人は2017年11月、寄付サイト「GoFundMe」に美談を投稿し、「ホームレス男性を救うため」として寄付を呼びかけた。最初の目標は1万ドル(約110万円)だったが、この話題は地元紙やテレビ、ラジオ、ネットメディアなどに取り上げられ、大きな注目を集めることに。最終的に1万4000人を超える人たちから、40万ドル以上の寄付金が集まった。
しかし、同郡のスコット・コフィーナ検察官によると、「一連の美談は全て、作り話だった」。
GoFundMeでのキャンペーン開始から1時間もしないうちに、"助けられた女性"ケイトリン・マクルーア被告人は『ホームレスに助けてもらったというのは、完全な作り話だ』と告げるメッセージを、親友に送っていたという。
調査によると、3人は寄付募集の少なくとも1カ月以上前に、カジノで知り合ったという。コフィーナ検察官は「彼女は高速道路でガス欠にもなっていないし、ホームレス男性はなけなしの金でガソリンを買ってもいない。むしろ、3人は共謀して『感動ストーリー』をつくりあげ、寄付金をだましとったのだ」と語った。
検察事務所の発表によると、3人は共謀して寄付金をだましとった詐欺の罪などで訴追されている。マクルーア被告人とダミコ被告人は14日夜に出頭し、手続きを経て釈放されたが、ボビット被告人は身柄を拘束されている。
検察は、6万件を超えるテキストメッセージや、銀行口座の記録などを調査。このカップルがBMWの高級車を購入したことや、ラスベガスやニューヨークなどのカジノで豪遊し、最高級のハンドバッグを購入するなどして、寄付されたお金を全て使い切っていたことを突き止めたとしている。マクルーア被告人は、2018年3月に送ったメッセージで、残金が1万ドル未満だと嘆いていたという。
一方、カップルが寄付金を浪費していたことに気付いたボビット被告人は、「私は7万5000ドルしか受け取っていない」と主張。2018年8月に、カップル2人を相手取って、残りの金を渡すよう請求する民事訴訟を起こしていた。
検察事務所の発表によると、今回だまし取られた寄付金については、GoFundMeが「すべて、寄付した人に返金する」と方針を示しているという。