アメリカのドナルド・トランプ大統領が、アメリカで生まれれば、外国人の子どもにもアメリカ国籍を与える「出生地主義」の制度を大統領令で廃止する考えを示した。
アメリカのニュースサイト「アクシオス」のインタビューの中で表明し、10月30日に記事が掲載されると、アメリカの各メディアが一斉に報じた。
トランプ氏の発言は、移民抑制を念頭に置いた発言とみられる。実現されればアメリカ移民政策の大きな転換となるが、憲法が規定する「市民の定義」を覆す形となる。
出生地主義とは?
出生地主義は、親の国籍に関わらず、子どもの出生地の国籍を与える制度。
採用しているアメリカでは、両親がアメリカ人(アメリカの市民権を有する人)でなくても、国内で生まれた子どもにアメリカ国籍が与えられる。
アメリカ合衆国憲法は「アメリカで生まれ、また帰化した人は、アメリカ合衆国の市民である」と定めており、「出生地主義」制度は憲法の規定に基づいている。
この制度に対してトランプ大統領は、インタビューの中で「(外国から)アメリカに来て子どもを産めば、その子どもが全ての恩恵を受けられるアメリカ国民になるなんて、ばかげている。終わらせる必要がある」と疑問を呈した。
制度の廃止には、憲法改正の必要はないとする考えを示し、大統領の権限でできる大統領令への署名を検討しているという。
30カ国以上で導入
BBCによると、出生地主義は、少なくとも世界33カ国で採用されているという。ラテンアメリカ諸国が中心で、アメリカの他にはカナダやメキシコ、マレーシアなどが導入している。
一方で、日本を始め、親の国籍を引き継ぐ「血統主義」を採用している国も多い。
子どもの出生地に関わらず、父親か母親の国籍が与えられる制度で、韓国やイタリアなど、アジアや欧米諸国で導入されている。
また、イギリスではどちらかの親が市民権か永住権を持っていた場合に子どもにも市民権が与えられ、条件付きで「血統主義」と「出生地主義」を併用している国もある。
11月6日に投票を控えたアメリカの中間選挙では、移民政策が大きな争点となっている。