シンガポールのフリーマーケットアプリに、インドネシア人の家政婦が「商品」として売り出されていたことが明らかになった。シンガポール最大手紙「ザ・ストレーツ・タイムズ」などが9月15日報じた。
アプリを運営する会社が出品者のアカウントを停止するとともに一連の商品を削除したが、当局は「容認できない」として調査に乗り出す方針だ。
悪用されたフリーマーケットアプリはカルーセル。シンガポールを中心に複数のアジア諸国で使われている。メルカリのようにアカウント登録した人同士で、中古品などが売り買いできる。
家政婦を「出品」したのは@maid.recruitmentというアカウント。8月15日に利用登録したばかりだった。
ザ・ストレーツ・タイムズによると、家政婦たちの上半身の姿が商品一覧に並び、いずれも白の背景にポロシャツ姿で統一されていた。「INDONESIA MAID」と説明書きがあったことから、家政婦たちはインドネシア人とみられる。
家政婦たちの中には「sold」の表示がついた人もいたという。
シンガポール労働力省はFacebookで声明を発表し、「家政婦をまるで商品のように扱う広告は容認できず、雇用あっせんに関する法律に違反している。もし違反が見つかれば、あっせん業者は免許の停止や取り消しというデメリットに直面することになる」など指摘。調査に乗り出す考えを示した。
カルーセルの広報担当者はザ・ストレーツ・タイムズの取材に対し、「このような出品はガイドラインに違反しており、許されない」と答えた。その上で、調査に全面的に協力する姿勢を示した。
カルーセルはすでに、家政婦を出品したアカウントを停止し、商品を削除したという。実際に家政婦の売買が成立した形跡はないとしている。
インドネシアからは怒りの声
人身売買のような「出品」に対し、インドネシアからは怒りの声が上がっている。
「出稼ぎ労働者の尊厳を踏みにじる、不当で屈辱的な出来事」。出稼ぎ労働者の支援に取り組むインドネシアのNGO幹部ワヒュー・スシロ氏はAFP通信の取材に対し、そう怒りをぶちまけた。
東南アジアの中で富裕層の多いシンガポールには、インドネシアやフィリピンなど周辺国から約25万人が家政婦として出稼ぎにやってきているという。
フリーマーケットアプリの出品をめぐっては日本でもしばしば問題になってきた。メルカリでは、現金や宛名が記されていない領収書、ワシントン条約で絶滅危惧種とされているセンザンコウの剥製などが出されては削除されるなど、不正出品者と運営会社とのイタチごっこが続いている。