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「複業」がスタンダードになる時代到来へ。実は知らない人も多い、自分の市場価値とは?

パラレルキャリアに向いている人、向いていない人ってどんな人?
Masanori Sugiura/Huffpost

会社員をしながら、スキマ時間で別の仕事をする副業、複数の生業を持つ「複業」やフリーランス、ボランティアで活動する人。会社だけではない第二のキャリアを築くことを「パラレルキャリア」と呼ぶ。

ランサーズが実施した「フリーランス実態調査2018年版」によると、副業・兼業を含む業務委託で仕事をする広義のフリーランスは、人口の17%にあたる1,119万となった。大手企業でも"副業解禁"が進むなど、連日のように働き方の多様化が紹介されている。

漠然と「私も何かしたい」と思う人も多いだろう。一方で、働き方の多様化に対して「自社のメリットが感じられない」と懐疑的な企業も少なくない。

パラレルキャリアって、誰にでもチャレンジできるの? 企業や個人にメリットはあるの?

そんな疑問を、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)代表、平田麻莉さんに聞いた。

平田さんは、大学卒業後、スタートアップのPR会社に入社、その後経営学を学ぶため大学に再入学し修士号を取得。在学中にフリーのPRプランナーとして活動し、フリーランス協会を立ち上げた。

フリーランスは褒められない。結果出すのが当たり前を求められる

ーーフリーランスや複業に関心がある人が増えています。正直なところ、向いている人、向いていない人ってありますか?

私がフリーランスになったのは成り行きです(笑)。修士号を取るために大学に戻った際に、学生をしながら業務委託で大学の広報をすることになって。そしたら、ほかの仕事依頼もきて、気づけばフリーランスになっていました。もともと掛け持ち癖があったので、仕事をひとつに絞らずにできる業務委託が合っていました。やりたいことが色々ある人にはいいですね。

デメリットとしては、上司がいないので、誰もフィードバックをくれません。だから自分で自分を律する必要があります。モチベーションが昇降しやすく、周りから褒められたいという承認欲求が強い人には会社員の方が向いているかもしれませんね。

フリーランスの場合は結果を出して当たり前です。どんな案件も再現性を持ってクライアントの期待に応えないと価値がない。それができなければ、クライアントはダメ出しもせず笑顔で去っていくだけです。

初めての「複業」なにから始めればいいの?

ーー結果が全て。かなりハードルが高く感じてきました。副業経験がない人も始められるのでしょうか?

まずは小さく始めてみるといいと思います。仕事の受け方は、数日で原稿やバナーデザインなどを納品するようなタスク型、数カ月から1年かけてシステムや制度、新規事業を作るようなプロジェクト型、そして、フルタイムではないものの社員に近い形で会社にコミットして役割を担う、独立系フリーランスのようなミッション型に分かれます。

会社員でスキマ時間を使うならタスク型が多いですね。今は、シェアリングエコノミーや、クラウドソーシングのサービスを使えば、仕事も見つけやすいです。

もし、お金をもらったり、責任を負ったりするのが不安な人はプロボノ(知識やスキルを生かしたボランティア活動)から始めてみるのもひとつの選択肢です。自分が共感できる活動に参加してビジネススキルを提供してみて、手応えを感じたら仕事として受けるステップもあります。

会社の外に出てみると、自分の"強み"に気づくことも

ーーそうすれば、自分のスキルに自信がなくても始められるんですね。

以前は副業やフリーランスって、エンジニアやデザイナー、クリエイターしかできないと思われていました。でも、時間単位でビジネスの相談に応じるスポットコンサル『ビザスク』では、登録者の7万人のうち、7割は現職の会社員です。

その業界への新規参入を見据えて業界構造のような「中の人なら当たり前に分かること」をちょっと知りたいという人もいれば、オフィス移転を経験したことがある総務担当者に話を聞きたい人もいます。そうした自分にとっては当たり前の知見を提供することで、平均して1時間あたり1.5万円の謝礼がもらえたりします。

ーー自分が気づいていない価値があるかもしれない。企業の中で同じ業務をしていると、自分のスキルってなかなか見えなかったり。

そうですね。副業やパラレルキャリアのモチベーションや意義はいくつかあって、ひとつが自己実現。例えばカメラやものづくりをしたい夢があるけど、それを本業にして食べていくのは自信がないという時に販売プラットフォームで試しに売ってみたりする。

2つ目が、キャリアの棚卸し。外に出てみると、自分の強みがわかります。部署内では同じような知識やスキルを持っている人がいるので当たり前だと思ってたスキルが、外では意外と重宝されたりします。逆に社内で自信満々だったことが、井の中の蛙だったと気づくことも。

3つ目が、他者を知ること。視野も人脈も広がるためキャリアが広がるきっかけになります。4つ目が、収入の補填。それを自分に投資してスキルアップに繋げられます。

企業がフリーランスの人材を受け入れるメリットは

ーー業務委託などで人材を受け入れている企業は、どのようなメリットがありますか?

今は、圧倒的な人材不足です。必要なスキルを持っている人を採用できるとは限りません。採用力がないスタートアップなどは、フルタイムで雇うには受け入れ環境も、予算も難しいことがある。そういう時は、1人の人を何社かでシェアする方がマッチします。

大企業も、「どうなるかわからない新規事業に社内のエースをアサインできない」といった声を聞きます。そんな時に即戦力として業務委託として受け入れるフリーランスが重宝されます。

また、オープンイノベーションといわれていますが、社内の知見やリソースでは限界を感じている時に、外部の違うネットワークや専門性を持つ人が参画することで良い刺激にもなります。

企業側が「副業解禁」する、本当の理由

ーー従業員の副業を認める企業も増えていますが、一方で副業解禁に二の足を踏む企業も。

解禁する企業には、「今は副業を認めないと優秀な人材が来てくれない」、「よそに転職されるくらいなら副業して欲しい」などの理由があります。あとは、副業で社員が成長すれば、自社に還元される効果を理解している企業も、解禁を始めていますね。

慎重になる理由の多くは「情報漏洩やコンプライアンス」と「本業への支障」です。ただ、情報漏洩リスクは、転職も同じ。副業だからリスクが増えるのではなく、情報漏洩に対する会社のカルチャーやセキュリティの問題ではないでしょうか。

Masanori Sugiura/Huffpost

本業への支障は、それを判断できる社内の評価制度があるかどうかです。社員それぞれのジョブディスクリプション(職務記述書)が明確で、ミッションやKPIが共有されているなら、達成できなければ評価を下げるだけです。本人もそうならないように努力しますよね。

でも、多くの日本企業は評価制度が曖昧なんです。コミットが減ったと感じても、説明できる評価指標がないと、「ちょっと気が緩んでいるんじゃないか?」しかいえません。その指標さえしっかりしていれば、企業は副業解禁に不安を持つ必要はないと思います。

生産性を上げるための効果的な"投資"

ーーパラレルキャリアで複数の仕事をこなす平田さんが気をつけていることってありますか?

時間とタスク管理には気をつけています。自分が得意なことに時間を使うために、得意じゃないことは外注して手放します。確定申告もアウトソース。自分が経営視点に立って考えます。自分で6時間かけて確定申告をするか、外注した6時間で自分が得意なことでいくら稼げるかです。

ーー時間管理は重要ですね。例えば、作業用のカフェを探す時間とか。

そうですね。フリーランスの場合は時間があればあるだけ仕事ができるので、そういう細かい時間の積み重ねは気にします。カフェを検索して移動する時間をシェアワークプレイス(コワーキングスペース)などに投資した方が生産性は高まります。拠点があれば人を招けるので、打ち合わせのための移動時間も省けますね。

都内7店舗ある会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」。個室のサービスオフィスからシェアワークプレイスや会議室がそろっている。リアルなコミュニケーションを重視し、常駐コンシェルジュが来客の受付対応や会議室でのティーサーブなどビジネスパーソンがスキマ時間を有効活用できるおもてなしを提供している。
都内7店舗ある会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」。個室のサービスオフィスからシェアワークプレイスや会議室がそろっている。リアルなコミュニケーションを重視し、常駐コンシェルジュが来客の受付対応や会議室でのティーサーブなどビジネスパーソンがスキマ時間を有効活用できるおもてなしを提供している。
Masanori Sugiura / Huffpost

ーー招くことでクライアントの印象も変わったりするんでしょうか?

シェアワークプレイス(コワーキングスペース)にはそれぞれの良さがありますが、ビジネスエアポートさんの場合だと、環境的にもいい立地で設備や内装もハイクラスなイメージですよね。コンシェルジュが常駐していて、会議室での打ち合わせ時にドリンクをサーブしていただけたり、きめ細やかで上質なサービスが魅力です。クライアントから見ても、セキュリティがしっかりとした職場環境だとわかると、安心して仕事を依頼できると思います。

"インプット"と"つながり"の重要性

ーービジネスエアポートでは、定期的にユーザー同士が交流できるイベントや、ゲストを招いたセミナーを開催しているそうです。

つながりが作れるのは大きいですよね。フリーランス協会でも定期的にイベントを開催していますが、横のつながりができてよかったという声をいただきます。1人でできることは限られているので、仲間がいれば助け合えます。

あと、インプットもすごく大事です。どうしても自分の周りには好きなものだけが集まり同質化しがちなので、違う情報が入ってきたり、自分が買わない本に出会えたりする環境に身を置くことでインプット効果が高まります。

天井が高く開放感のあるビジネスエアポート六本木の共有ラウンジ。定期的に、交流会やビジネスセミナーも開催される。
天井が高く開放感のあるビジネスエアポート六本木の共有ラウンジ。定期的に、交流会やビジネスセミナーも開催される。
Masanori Sugiura / Huffpost

ーー会社員を辞めると、賃貸契約や信用部分でも不安なことはありませんか?

そうですね。企業に属していないと、返済力があっても銀行や不動産会社で、ローンや融資が組めなかったりします。ビジネスエアポートでは、登記できるのが良いですよね。保活でも自宅が作業場だと審査基準に影響するためコワーキングスペースを契約している人もいます。

フリーランス協会としても、その課題を解決するために、個人の信用力をスコアリングし、与信の仕組みをつくろうとしています。銀行のトランザクションやクラウド会計データ、それにソーシャルグラフなど個人の様々なデータから、個人の信用力を多面的に計り、可視化したいと思っています。

人生100年時代。自分らしく働くためのポートフォリオを持とう

ーーこれからパラレルキャリアに挑戦しようとしている人たちが努力すべき点はありますか?

これから仕事の在り方が、プロジェクトに応じた人を集め、終わったら解散するプロジェクト型に変わるといわれています。つまり、名指しで必要とされる人材かどうかが、よりシビアになります。

だからこそ、副業などで、会社の看板を外して、どれだけ自分に市場価値があり、それに応えられるかを小さくチャレンジしていくといいと思います。

キャリアは掛け算です。例えば広報はごまんといますが、テック系、子育て系など、強みが増えるほど希少性が高まる。変数のネタを増やすにも、パラレルなら自分に合うテーマ、合わないテーマを見極められますよね。

ーー自分の強みを知り、スキルを磨く努力が大事なんですね。

長い人生、子育てや介護などライフイベントによって働き方のリズムを変えないといけない時もあります。今まではフリーランスや企業の一方通行でしたが、フリーランスで働いたのちに、また会社員に戻るという選択肢だってあります。

そういう雇用形態レベルの流動化が必要になる。だからこそ、その時に自由な選択をできる自分でいるために、自分は何をもって社会に貢献できるのかを常に意識しておく必要があるんです。

Masanori Sugiura / Huffpost

ーーパラレルキャリアに興味はあっても、踏み切れない怖さがどこかにありましたが、自分に合わせた働き方を選べるようにしておくことが大事だと。

そうですね。私からすれば、これからの時代は1社で勤め上げるつもりで働く方がリスクだと感じます。これから人生100年といわれる中で、60歳まで勤め上げて人生が終わることはないですよね。

それに定年後に収入がなくなることよりも、会社の看板やつながりがなくなりアイデンティティを失うほうが不安だとシニア世代の方からは聞きます。だからこそ、長く自分らしく働くために自分のポートフォリオを持つことが大事です。そして、色々なつながりを持っておくことが一番のリスクヘッジだと思います。

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「パラレルキャリア」「働き方改革」言葉だけが飛び交い、憧れと不安を抱えている人も多い。でも、本質は「働き方」ではなく、長い人生の中で「どう生きていきたいか」だ。自分らしい人生を選択するために、少し先回りして自分を試してみる。無理をするのではなく、できることから少しずつ始めてみる。そうすれば、これまで気づかなかったあなたの価値も見えてくるのかもしれない。

(取材・文:西本美沙 編集:川崎絵美)

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