漫画作品を無断で掲載し、広告収入を稼いでいた海賊版サイト「漫画村」が、閉鎖状態になって約4カ月が経つ。
政府の知的財産戦略本部は8月24日、こうした海賊版サイトに対する5回目の検討会議(タスクフォース)を開いた。会議では、弁護士から新たな「漫画村」ともいえる海賊版サイトの実態について報告が上がった。
第2の漫画村がアクセス数を伸ばしている
違法海賊版サイトは、漫画村のように、違法なコンテンツをサイト上で読むタイプの「オンラインリーディングサイト」のほか、不正アップロードされた漫画や雑誌をダウンロードできるリンクをまとめた「リーチサイト」 などがある。
会議では、出版社の業界団体でつくる「出版広報センター」の村瀬拓男弁護士が、「漫画村の前に台頭した『FreeBooks』も、『漫画村』も、4~6カ月程度で巨大企業に成長した」と資料で報告。
短期間で広まってしまうことを念頭に、「数か月程度で対応可能な方策でなければ、実効性に欠ける」と指摘した。
大きな話題になった漫画村は閉鎖したものの、最近では新たな「漫画村」となりうる海賊版サイトが出てきている。
内容は漫画の表紙のみをサイトに張り付け、そこから違法データが保管されているサイトのURLを載せるなど、「オンラインリーディングサイトとリーチサイトの中間のようなもの」だという。
会議で報告された「第2の漫画村」と言われる違法サイトは、漫画村が閉鎖状態になった後に存在が確認され、月間訪問件数は6月に約100万件、7月には約240万件と急増の兆しを見せていた。会議では、解析の結果、運営者は海外在住者であることが指摘された。
このサイトは画像の保管庫として写真の共有を目的とした一般的なコミュニティサイトを使い、訪問者を誘導。その後、コミュニティサイトが出版社の削除の要請に応じたため、一時的に使えない状態になっている。
しかし、村瀬弁護士は「画像の保管先を一般のコミュニティサイトから、アンダーグラウンドな保管庫に移行する可能性もある。移行してまた復活させることもある」と話す。
リーチサイトは、直に画像を載せているわけではなく、URLを掲載しているだけなので、著作権侵害とは言えず、削除要請にもほとんど応じないという。
漫画村閉鎖後も「ほとんど状況は変わらない」
新たなリーチサイトでは、7月の訪問件数が1916万件と爆発的に伸びているものもある。訪問者の94%は日本からのアクセス。ただ、漫画村ではピーク時で月間約8000万件の訪問があったため、前出のサイトを含め、今後も伸びていく可能性は指摘されている。
サイトから誘導される保管庫を運営するサービスに対して、出版社から再三の削除要請をしているが、削除に応じても数日で再度違法データがアップロードされる。
村瀬弁護士は「いたちごっこ。漫画村のような大きなサイトが閉鎖したからといって、海賊版サイトを取り巻く状況はほとんど変わらない」という。
とりあえずの「止血」ができれば
マネタイズ方法も様々。広告収入で儲けていた漫画村のほか、課金するサイトなどもある。
あるサイトでは、月額数百円で、漫画のほか、週刊誌などの雑誌、文芸書まで読める状態になっていた。キャンペーンで数十円になることもあり、Twitterやブログなどで広報するなど、一般の電子書籍販売サイトのようにも見えてしまう。
このほか、広告も無く課金もないが、「多くの人がアクセスするサイト」を一つの価値とみて売買されることも考えられるという。
こうした多くの事業モデルがあり、村瀬弁護士はサイトのブロッキングについても「必要かつ有益な局面は存在する。 もっとも、100%遮断する必要はない。とりあえずの『止血』ができれば足りる」とし、8割程度の遮断ができれば、効果が期待できるとした。
音楽・映像業界に比べて「後れを取っている」
著作権法上では、違法にアップロードされたコンテンツを、違法にアップロードされていることを知りながらダウンロードしてPCなどに保存する行為は違法であるとされる。
しかし、このコンテンツは「録音され、又は録画された著作物など」となっており、静止画である漫画などの出版物は含まれない。
「音楽や映像にくらべ、出版コンテンツは後れを取っている。しかし、タスクフォースの報告などにより、こうした著作権法の改正や、リーチサイトの違法性についての議論が、前に進む可能性はある」と村瀬弁護士は言う。