アメリカのグレイシャー国立公園で、落雷をきっかけに発生した大規模な火事。燃えさかる山中から、車で脱出しようとする親子の動画に大きな注目が集まっている。
この動画を今週、FacebookやYouTubeに投稿したジャスティン・ボルトンさんは、父親とキャンプ中に山火事に巻き込まれたと説明する。
ビデオはこんな風に進む。
車を運転するボルトンさん。行く手に炎を見た父が「ああ、クソ」と罵る。
ボルトンさんは、息を呑んで一瞬言葉を失ったあと「まだ先に進むの?」と尋ねる。
すると父は「そりゃ、行ってみればわかるよ」「走り抜けられると思うよ」と答える。
車が燃えちゃうかもと心配するボルトンさんに、父は落ち着いた声で「いいから、運転を続けろ」と伝える。
以降、会話は次のように続く。
息子「オヤジ、こんなの狂ってるよ」
父「ああ、そうだな...。でも、こんなところで立ち往生したくはないだろ」
父「大丈夫、問題ない、問題ない。スピードを落とせ、落とせ、落とせって。火に焼かれたりはしないから」
息子「オーマイゴッド」
父「大丈夫だって」
あたりは、まさに火の海とでも言うべき状況だ。道のすぐ脇で、ゴウゴウと炎が燃え上がっている。
そんな状況でも、70歳を超えた父は、落ち着いた声をかけ続けている。
息子「何だよコレ......」
父「気楽に、気楽に......」
息子「オーマイゴッド」
父「進め、大丈夫だよ」
しかし、しばらくすると周囲は一面、火の海といった様相に。
息子「オヤジ、車がめっちゃ熱くなってる。このままだと爆発しちゃうよ」
それでも、父は「大丈夫だ。問題ない」と冷静さを崩さない。
息子「ジーザス、ゴッド、助けてください......」
しかし、そこから少し進んだところで、ついに前に進むことは不可能に。
燃えさかる倒木が、道を完全にふさいでいたのだ。
親子が「引き返そう」と話すところでビデオは終わっている。
結局彼らはそこからキャンプ場まで、車で引き返した。
そして、幸運にもキャンプ場の職員たちと出会い、ボートで脱出することができたという。
投稿された動画について、ボルトンさんはフェイスブックで「山火事の中で、無茶な運転をしていたわけじゃないですよ」として、このようなピンチに至った経緯を次のように説明している。
「私たちが登山道のキャンプ場にいたとき、ハウ・リッジの火事がちょうど始まりました。最初は5エーカー(東京ドームの4割程度の広さ)ぐらいだったのが、1時間程度のうちに、その400倍もの規模になりました。
私たちは急いで停めてあった車に戻りました。往路は3時間ほど山道を安全に運転して、そこまでたどり着きました。徒歩を除けば、この道路が唯一の脱出路です。
結局、倒木に阻まれて立ち往生した後、私たちはもう一度この道を戻って、最終的にはボートに乗っていた公園の職員2人に助けられました。彼らは命の恩人です」
なお、2人の乗っていた車は、山火事に呑み込まれ、燃え尽きたそうだ。