東京医科大が女子受験者の入試の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていた問題で、公益社団法人日本女医会の前田佳子会長が8月2日、自身のFacebookでコメントを発表した。その中で「時代に逆行している」と憤りをつづった。
この問題で、朝日新聞デジタルなど報道各社は「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するための暗黙の了解だった」といった大学関係者の話を報じている。
前田会長はこの点について、「『女性だから離職するのではないか』と危惧するのでなく、女性も離職せずに働ける職場環境を整える努力をするべきだ」と指摘。
「働き方改革は、性別を問わず能力を発揮できる職場を作るためにこそ行われるべきだ」と、大学や政府に対応を求めた。
コメント全文は以下の通り
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今回の東京医大の報道を聞いた第一印象は「時代に逆行している」ということです。日本は2016年4月に女性活躍推進法が施行され、国の政策として「一億総活躍社会」を目指しているはずです。そのためには女性という理由で入学試験の採点に不当に手を加えて門戸を閉ざすべきではありません。
日本で医師国家試験に合格した最初の女性である荻野吟子は、1870年19歳の時に医師を志しましたが、医学を学ぶこともままならず、私立医学校に入学するまでに9年を要しました。卒業しても女性という理由で国家試験を受けることができず、試験を受けるまでに2年を要しました。140年以上が経過した現代においても女性という理由だけで学ぶ権利を取り上げられるとは、荻野吟子もさぞ驚いていることでしょう。
本邦における医学部入学者に占める女性の割合は1965年に10%で、以後は右肩上がりに上昇していましたが、1995年に30%となった以降現在まで横ばいとなっております(文部科学省「学校基本調査」より)。一部の大学ではすでに女子医学生が50%を超えてきているにもかかわらず、全体の割合が変わらないのには何か理由があるのではないかと思わずにはいられません。
「女性だから離職するのではないか」と危惧するのでなく、女性も離職せずに働ける職場環境を整える努力をするべきです。働き方改革は過労死予防のためだけにあるのではなく、性別を問わず能力を発揮できる職場を作るためにこそ行われるべきだと考えます。
公益社団法人日本女医会は2007年より男女共同参画事業委員会を設置し、「医学を志す女性のためのキャリア・シンポジウム」を年1回開催しております。女性医師が継続して働き続けるために必要な環境について、講演とディスカッションを重ね、指導的立場の先生から若い医師・学生に至るまで、意識改革を訴え続けています。今後もこの活動を継続し、次世代の女性が女性であるという理由で学ぶ環境や働く環境を奪われないよう支援してまいります。