7月11日、1人の小さな命が誕生した。名前は、リンク。約12時間の陣痛を耐え抜いたぺこさんと、手を握りながら応援し続けたりゅうちぇるさんに見守られながら。
「パパ 頑張ります!!!」とインスタグラムでリンク君の写真とともに発信したりゅうちぇるさんは、「父親」という新しい自分の役割にどう向き合っているのでしょうか。自分を偽ってきた過去、今の仕事との向き合い方、そして変わり始めた未来、それぞれへの思いをハフポスト日本版に語ってくれました。
父親になって変わったこと
ぺこりんと結婚した時は、正直何も変わらなかったです。ずっと同棲もしていたし、結婚したからといって苗字が変わったり、旦那さん、夫っていう呼ばれ方をしたりするだけで、2人の関係性は変わらなかった。
でも子供ができた時は、今まで生きてきた中で一番嬉しかったし、自分たちが1人の命を守っていくんだっていう責任感も出てくるし、自分の親のことを考えるようになりました。
子供の時、何も考えずにただ道を進んでいたけど、いろんなところで親が前に出て道を作ってくれて、そこを僕は歩いていたんだ。親が全部用意してくれて、だから僕はハッピーだったんだ。だから親にもっと感謝するようになった。この子のために必死にがんばらないといけない、って。
今までは、自分らしくあることを大事にしてきたからこそ、ちょっと「りゅうちぇるっぽくないな」っていうお仕事はやってなかった自分もいた。でも子供を育てていく上で、もっとお仕事を頑張らなきゃって思うようになったから、「りゅうちぇるっぽくないな」っていうお仕事も挑戦してそれをりゅうちぇる色にしようとか。とにかくチャレンジしてみる方向に変わった。
僕は今まであんまり男性だから、女性だからって考えたことはなかったけど、出産を通したら、男性だからできること、女性だからできること、っていうのはその分野に関しては考えるようになりました。
例えばぺこりんはおっぱいをあげたり、赤ちゃんが泣く3秒前から起きたりするけど、僕は全く起きれなくて、なんかあったら起こしてねっていつも言います。
そういうところでやっぱ頭は「男」なんだって思うことがあって、だったら男性ができないこと以外でできることは何かって考えました。1時間お仕事の合間があいたら、お家に帰ってぺこりんのごはん作るとか、母乳を冷凍で保存しているんですけど、それをあっためて哺乳瓶に入れたり、マッサージをしたり、お掃除したり...。
できることを探せば、古風な親って感じではないかもしれないけど、新しいルールが2人の中でできている。女性、男性というか、それぞれの夫婦が「じゃあこうしていこうね」って決める話だと思います。
誰も目指さず、2人のルールは2人で決める。2人のルールを作れたもん勝ち。そこで絆ができてくるんじゃないかなって思います。
僕のお父さんの場合は、ただただ陽気で明るくて、悩みを相談しても、「なんくるないさー」っていうだけ。「だから?ガチで悩んでるの!」って言っても「なんくるないさー」としか言わなかった。だけど、本当に一つだけ言えることは、たくさんの愛をもらったんです。
本当にここまでかっていうくらいギューってしてくれたり、大丈夫だよって味方してくれたり、優しさと愛をもらった。それはママからもそう。「お父さんらしさ」、「お母さんらしさ」関係なく、愛をたくさんもらったので僕もそこはすごく両親のようになりたいって思います。
どんな子に育てたいか
自分をしっかり持った子。自分の色を見失ったら何もなくなっちゃうから。
本当にやりたいことがあるんだったらやってみるという素直さを持って欲しい。まずはやってみて、ぶつかったりしても、それは全然遠回りじゃない、僕はいい道だと思っているんです。
色々考えすぎて挑戦を投げ出しちゃったり、やめちゃったりする人がすごい多いんですけど、僕はそれをしたことがない。気持ち次第なんですよね。
リンクに対しても自分に自信を持てるような素敵な子に育てるし、ぺこりんもたくさん愛を与えて育てていくから、自信を持った自分を曲げない子になってほしいなって思います。それは子育てのテーマです。
僕の場合は、最初から自信を持っていたわけではなかったんです。中学3年生までは、ちょっと喋ったらおかまって言われるし、人と違うって言われるから、なるべく人と関わりたくないって思っていました。
自分を隠していた時代があった。隠しているからこそ、自分のことを決めつけられて、こういう人だもんねって言われていた。自信が持てないし、世の中のせいにばかりしていたんですね、その時は。
でも、ずっとこんな人生なのかって考えた時にやっぱりすごくいやで、高校生からは地元の友達があんまりいないちょっと離れた高校に行こうと決意しました。16歳の時にりゅうちぇるっていう名前でツイッターを始めて、ちぇるちぇるランドの王子様のりゅうちぇるっていう自分の世界観をようやく出せて、自分を表現したんですね。
怖かったんですけど、つまらない学校生活とか自分を決めつけられるのがもっと嫌だった。嫌われないためにもっと低い声を出して、自分をすごく偽ってたんですね。それが辛かったんですよね。
自分じゃない自分でいたら、偽りの友達ができて、そんな偽りの友達と喋る会話なんて面白くもないし、僕が大好きな先生の文句を言って、本当に全てがずれてくる。
自分って誰?本当の自分ってなんなんだろうって思ってきちゃう。その渦で人生ずっと迷子になるのが嫌だったんです。
例えば学校にそばかす書いていったり、丸メガネで行ったり、魔法の杖を持って学校に行ったりとか、そういうことをしたかった。
ようやく清々しい楽しい気分になれて、SNSでずっと自撮りとかコーデとかあげていたら、学校外の東京の人とか原宿にいる人からもフォローされたりメッセージとか来たり、可愛いとか言ってくれたりして、自信になった。
今ここのちぇるちぇるランドではすごい馬鹿にされているけど、原宿ではすごいイケてるんだもんっていう自信になって、じゃあ上京しようって思いました。それが夢にもつながったし、本当に高校から僕は変わりました。
小学生、中学生の時に辛かった経験があったから、今は、その辛さを上回るっていうのがまず考えられない。ぺこりんもいて、リンクもいて、お仕事もあって、もう孤独じゃない。
表現者として、テレビとどう向き合うか
テレビに出て3年くらいなんですけど、若者としてこういうこと言ってくださいとか、こういう風にして欲しいとか、言われたこともあります。でも正直みんなが面白いなって自然に入ってくるものであれば、合わせるっていうことはしてもいいと思う。
でもリアルを届けるっていうことはテレビができる大切なことだと思う。僕は空気読めるって思われるんですけど、空気を乱すタイプです。テレビ向きじゃないな自分って悩むこともあるんですけど、それがなくなってしまうとみんな一緒になっちゃうからこのままでいこうって思ってます。
自分の考えを頭の中だけにとどまらせるっていうのは、僕は表現者のお仕事をせっかくさせてもらっているんだから、もったいないなって思う。
「このとき実はこうじゃない?」って発信をして届くのが、このお仕事の素敵なところだと思う。
だから焦らなくていいんだよ、怖がらなくてもいいんだよ、自分らしくでいいんだよ、と声をかけたい。一般の人が難しいことでも、僕はできるからこそ、頭にとどめるんじゃなくて人を傷つけないのであれば、どんどん言いたいなって思います。
その思いは、リンクにも伝えたい。どうしてもこれから小学校高学年、中学校とか人の目を気にする時代にぶち当たります。その前に、人と比べないで自分らしくいた方が自分のためになることを学んできた2人だからこそ、伝えていきたいなって思います。
りゅうちぇるさんの枠にとらわれない「軽さ」は、時代の変化なのか
時代は確かに変わってきていて、LGBTのことをネガティブにとらえる人が「なんかちょっと考え方狭くない?」って思われる風潮はあると思う。LGBTの存在を受け入れることが素敵っていう空気になってきているけど、実際その子たちが幸せなのか、って考えるとまだまだ。
理解がある風に見えて、みんな実は避けてるとか、本人にしかわからない辛さがたくさんあると思う。彼らに本当に寄り添えている人っていうのは、僕たちの時代でもまだまだめずらしいと思う。
僕なんてテレビの向こうにいて、SNSの人、遠い存在だから「OK」でも、実際にあなたの周りに存在していたらいやなのかもしれない。
誰にも相談できず、僕にSNSでコメントしてくれるんですよね。性別に関することでは、転校して迎え入れてくれたけど、ぶっちゃけ孤独、陰で悪口言ってる子もいる、みたいなコメントが来ます。
性別に限らないと、授業参観に派手な格好しているだけで言われたこととか、ママとパパが地味な格好をするって誰も決めていないのに。外で相談できず、SNSを通してでしか言えない。
やっぱりそういう人たちの味方になるような言葉を発信する立場として考えます。
存在は認めている。じゃあ、その上であなたは何をするのか。そういう人たちが生きやすくなるために、自分は何をできるか。「こういう言葉は言ったらいけない」とか、もっと具体的なことを考えるようになったら、本当に変わっていくのかな、って思います。
僕たちは、表現者だからこそ、変えていくための価値観を発信したいなって思います。時間がかかるかもしれないけど、みんなにそういうメッセージを伝えるのは僕たちの仕事だからこそできることだと思っています。
りゅうちぇるさんが登壇するイベントが9月8日(土)に開催されます!
開催日時 :2018年9月8日(土) 11:00-13:00
開催場所 :青山学院大学 15号館1階 ガウチャー記念礼拝堂
登壇者 :りゅうちぇるさん、椎木里佳さん、蓮見勇太さん、井土亜梨沙
イベント名:SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2018(主催:日本財団、渋谷区)
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