7月16日は「海の日」。
ベルギーのブルージュ市で開催中の「ブルージュ・トリエンナーレ2018」に出品されたクジラのインスタレーションが、話題を呼んでいる。運河から飛び出さんばかりにジャンプしているクジラの体長は約12メートル。材料はすべて、海を漂っていたプラスチックごみだ。
ニューヨークが拠点の建築デザイン事務所「Studio KCA」が手がけたもので、海に漂う約1億5000万トンものプラスチックごみの存在に関心を持ってもらうのがねらい。「Skyscpraper(スカイスクレイパー)」(The Bruge Whale)という名がつけられている。
KCAが自然保護団体「ハワイ・ワイルド・ライフ・ファンド」などと協力し、ハワイの海岸やニューヨークの水路などでプラスチックごみを4カ月にわたって拾い集め、そのうち、青と白の5トンをクジラの材料にしたという。
制作資金を募るサイトで、KCA代表のレスリー・チャンさんは、この作品について「いまの世界で、なぜわたしたちがプラスチックの使いかたと捨て方を変える必要があるのかを示す見本です」と話す。
作品を形作るプラスチックごみには、日本から流れついたと思われる「山田魚市場」「田老漁協」「鎌田」「欣栄丸」「JFたろう」「さいとう」などの文字がみえるプラスチックごみも目につく。東日本大震災に伴う津波の影響で流されてきたものかもしれない。
国連によると、プラスチックごみは、年約800万トンが世界中の海に流れ出ているとされる。1億5000万トンのプラスチックごみが海上にあるとされる。
細かく砕かれたプラスチック片は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、スクラブ洗顔料や歯磨きに含まれる「マイクロビーズ」と呼ばれる微小のプラスチック片と同様、分解されずに海に流れ出ている。
こうした破片などを飲み込んだ魚や鳥、大型動物の体内に蓄積するほか、粘膜などを傷つけたりして、死亡にいたるケースが後を絶たない。また、食物連鎖で人間の体内にも取り込まれるリスクも指摘されている
本格的な規制の動きも始まっている。欧州連合(EU)は5月、に使い捨てのプラスチック製品を禁じる規制案を加盟国に示した。ストローをプラスチック製から紙製に切り替える飲食店やファストフードチェーンが広がっているのも、こうした動きを踏まえてのことだ。
日本でも、マイクロプラスチックを抑制するよう事業者に努力義務を課す改正海岸漂着物処理推進法が6月に成立した。同じく6月、30年までにすべてのプラスチックをリサイクルするか、代替可能なものに切り替えることを目指す「海洋プラスチック憲章」が、カナダのG7サミットで採択された。だが、日本はアメリカとともに署名を見送った。その理由について、中川雅治環境相は6月12日の会見で「産業界や政府部内で調整をして、合意に臨むのが一般的だが、今回はそうした調整を行う時間が足りなかった」と説明した。