タイ北部チェンライ郊外のタムルアン洞窟に閉じ込められている少年ら13人は、9日間行方不明になったのち、救助隊のダイバーにより全員無事で発見された。しかし、いまだ彼らの救出方法は見つかっていない。
大雨による増水で出口を失った少年らを助けるには、洞窟内の水位が下がるのを待つか、彼らが自力でダイビングをして脱出させるかだ。タイ国軍は、少なくとも4カ月分の食料などの物資を13人に届ける必要があると説明した。
閉じ込められたのは?
洞窟に閉じ込められているのは、タイのサッカーチームに所属する11歳〜16歳の少年と25歳のコーチ。BBCによれば、コーチはこれまでも子どもたちの遠足をよく引率しており、2年前にも同じ洞窟にチームの少年らを連れて行ったという。
13人は6月23日午後に洞窟に入ったまま、大雨による増水で洞窟内の道がふさがれて戻れなくなった。
タイ国軍や警察に加え、アメリカ、中国、ミャンマー、ラオス、オーストラリア、イギリスなどから1000人以上が捜索に協力した。
どうやって見つかった?
少年らを発見したのは、イギリス人ダイバーの2人だ。全員の無事を確認した。
タイ国軍がFacebookに投稿したビデオからは、ダイバーが懐中電灯の明かりで少年たちを照らし、声をかけている様子がわかる。彼らは疲れた表情をしながらも、手を合わせてダイバーに応じた。
「大丈夫ですか」などと問いかけると、数人が「おなかがすいた」「食べ物がほしい」とこたえたという。中には、疲労から話すことができず、救助隊にメモを渡したり、助かると分かって泣き出したりする少年もいた。多くは軽傷を負った程度だったという。
少年たちの救出方法は?
少年たちを救助する方法は、いまだ決まっていない。洞窟内の水位が十分下がるのを待つという方法が現実的だが、いつ終わるともわからない状態で、日光を浴びることもなく、薄暗い洞窟の中に閉じ込められる少年たちの体力の衰弱や精神状況が心配される。現在、ポンプで水を吸い出す作業を進めているが、1時間に1センチのスピードであり、現在雨季の真っ只中のタイでは、いつ大雨で状況が悪化するかわからない。
しかしタイ当局は4ヵ月の食料を供給すると発表しており、10月の雨季が終わるタイミングまで事態が長引く可能性を示唆している。
CNNの取材に対して、海洋探検家で水中ロボット工学の専門家であるティム・テイラーさんは、水位が下がるまで待機するのは得策ではないと指摘した。
「多孔質の岩でできた洞窟は、巨大なスポンジのようなもので、地下水面まで水位が上がってしまえば、洞窟全体がどうなってしまうわかりません」
少年たちが、自力でダイビングをして脱出するという方法もある。しかし体力が落ちていて、精神も不安定な状況で、不慣れなダイビングをするには大きな危険性が伴う。
テイラーさんは、「脱出するのにうまく泳ぐ必要はないのです。潜水装置が全てやってくれるので、恐怖心を克服して、やり方を学ぶためにリラックスすれば良いのです。ただし、それがもっとも教えるのが難しいことですが」とコメントした。
一方、アメリカ・フロリダで、国際地下洞窟救助救出機関の地域調整官であるエド・ソレンソンさんはBBCに対して、この方法は極めて危険だと指摘した。
「不慣れな、視界ゼロの状態で、パニックに陥る可能性が十分にあり得ます。彼ら自身だけでなく救助員の死亡にもつながるリスクがあります。この時点では、食料、水、ろ過システム、必要に応じた酸素などを供給し、少年たちになるべく快適で暖かい環境と食料などの物資を整えてあげる方がいいと思います」
世界が固唾を飲んで、13人の様子を見守っている。