子どもたちはあなたのモノではないーー。そんな文言が入った「10カ条」が、Twitterで話題になっている。デンマークサッカー協会がまとめた子どものサッカー指導者向けの「10カ条」で、サッカーW杯ロシア大会のデンマーク対オーストラリアの試合があった6月21日夜、テレビで紹介された。
日大アメリカンフットボール部の危険タックル事件などから、指導者のあり方が問題になる中、子どもを尊重した指導の考え方として、議論を呼んでいる。
10カ条は次の通り。
①子どもたちはあなたのモノではない。
②子どもたちはサッカーに夢中だ。
③子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
④子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
⑤あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
⑥アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
⑦子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
⑧コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
⑨コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
⑩コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。
10カ条は、子供たちの意思や主体性、考える力を尊重する内容だった。この10カ条を紹介するツイートに対し、「子育て全般にいえる気がする。心のメモにする」という意見のほか、「アメフトのどっかの監督&コーチにも(読んでほしい)」と、危険タックル事件に言及する意見も目立った。
Twitterでこの10カ条を紹介したツイート主は、次のように指摘する。
「俺はこの10か条がスター選手を育てる上で有効かはわからない。(まぁデンマーク代表を見ていると有効としか思えないが)確実に言えるのは、少年少女を指導する段階では、この10か条は正しいということ。日本では早い段階からこれを破られているのでスポーツ嫌いが増える」
これに対し、「すばらしい事の様に聞こえるけど、これじゃ責任放棄してても同じかもしれないな。 このコーチで素晴らしい選手が沢山育つなら、コーチなんて不要だと思う。 厳しい環境で育った選手の方がレベル高くなるのは間違いないし」という指摘もあった。
ツイート主はこう反論した。「その理屈だとデンマーク代表は弱いということになりますけどね。彼ら普通に強いですよ。昔からずっとね。厳しい環境で育った方が強くなるという発想は古いと思います。それこそこの10か条の正反対を行く日本の体育会系至上主義が招いた悪しき風習でしょう」
ほかに「これを見て拍手喝采する人は確かに多そうですが、日本人の指導者が同じことをやったら 『てぬるい。』『 やる気あるんですか?』なんてクレームつける保護者が結構いそうな気はしますね」という指摘もあった。
■10カ条は、"神コーチ"の著書から広まった
「10カ条」が広まったのは、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成普及部コーチなどを歴任した、NPO法人I.K.O市原アカデミーの池上正理事長の著書「サッカーで子どもがみるみる変わる7つの目標」からとされる。
池上さんは、40万人の子どもを指導した経験を元に、考えるサッカー、楽しむサッカーを通じて子どもを伸ばす指導方法を伝え続けてきた。
池上さんは、著書「サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法」のまえがきで、日本の子どものサッカー指導の様子をこう指摘している。
大会にも行きますが、そこで見かけるコーチの姿は明らかにスペインで見たものとは違います。常に選手を煽り「シュート!」「寄せろ!」と指示命令が飛び交います。自分で考える時間も、機会も、与えません。なので、ピンチになると子どもは全員ベンチを見るのです。親たちも、わが子に期待するあまり顔をゆがませて怒っています。
30年近い指導経験の中で、このような大人につぶされていく選手、才能を伸ばしてもらえない子どもたちをたくさん見てきました。日本の少年サッカーを変えていくには、まず大人が変わらなければならないと痛切に感じています。
育て方さえ間違わなければ、日本の子どもたちはもっと伸びます。今、子どもたちに足らないもの、大人たちが改めるべきものは何でしょうか。(Amazonの書籍紹介から抜粋)