6月18日に大阪府で震度6弱を記録する地震が起きたが、その前兆として「地震雲が出た」とする投稿がTwitterなどで拡散した。しかし、気象庁の専門家は「雲は地震の前兆にはなりません」と"地震雲"の存在そのものを否定している。
ネットを賑わす「地震雲」とは一体何か。詳細を調べてみた。
■各地で地震雲の発見の声相次ぐが...
大阪地震の後、こんな内容のツイートが、雲の写真とともに相次いだ。
「夜変な筋の雲出てたけど地震雲やったんか?」 「家から見えた地震雲。昨日からあってまだ居座ってるから怖いよ 」
「地震雲」とは、どんな雲なのか。グーグルで画像検索をすると、様々なかたちの雲が現れる。
地震雲という現象を言い出したのは、元奈良市長で衆院議員を務めた鍵田忠三郎氏とされる。
ただ、朝日新聞はこう説明している。
「地震の前に発生するとされる雲。雲の形は、放射状、渦巻き状、直線状の雲など様々な種類があり、明確な定義もない。科学的に地震と雲の関連性は実証されておらず、気象庁や日本地震学会などは否定的な立場をとっている」(2013年6月6日)
■専門家は否定
大きな地震があると、SNSで投稿される「地震雲」。大阪地震の際、気象庁気象研究所(茨城県)の荒木健太郎研究官は「雲は地震の前兆にはなりません」「雲の状態から地震の影響等を判断するのは不可能」とツイートした。
荒木さんは、自著「雲を愛する技術」(光文社新書)で、次のように書いている。
「雲は地震の前兆にはなりません。(中略)何の変哲もない普通の人が、名前を間違えられた揚げ句に怖がられているのと同じことが起こっているのです」
どのような雲が地震雲と呼ばれているかについては「最も多いのが飛行機雲」「上中層の大気重力波に伴う波状雲も地震雲と呼ばれることが多い」という。
荒木さんの説明や著書を要約すると次のようになる。
・地震が雲に与える影響はそもそも未解明
・仮に何らかの影響があったと仮定しても,現状で「地震雲」と呼ばれている雲は全て気象学で説明できる
・そのため,雲を見て形などから地震の影響があるかどうかを判断することは不可能
■気象庁「雲と地震は全く別の現象」
地震雲が現れると信じている人は少なくないが、科学的には立証されていない。気象庁の公式サイトでも、以下のように説明している。
雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です。大気は地形の影響を受けますが、地震の影響を受ける科学的なメカニズムは説明できていません。
「地震雲」が無いと言いきるのは難しいですが、仮に「地震雲」があるとしても、「地震雲」とはどのような雲で、地震とどのような関係で現れるのか、科学的な説明がなされていない状態です。
日本における震度1以上を観測した地震(以下、有感地震)数は、概ね年間2,000回程度あり、平均すれば日本で一日あたり5回程度の有感地震が発生していることとなります。
震度4以上を観測した地震についても、最近10年間の平均(2011年と2016年を除く※)では、年間50回程度発生しています。このように地震はいつもどこかで発生している現象です。
雲は上空の気流や太陽光などにより珍しい形や色に見える場合がありますし、夜間は正確な形状を確認することができません。形の変わった雲と地震の発生は、一定頻度で発生する全く関連のない二つの現象が、見かけ上そのように結びつけられることがあるという程度のことであり、現時点では科学的な扱いは出来ていません。
気象研究所の広報担当者もハフポスト日本版の取材に「地震と雲がどういう関係があるのか、科学的な因果関係やメカニズムは存在していない」と話した。