人気ロックバンド「RADWIMPS」が6月6日にリリースした新曲「HINOMARU」の歌詞が波紋を広げている。「この身体に流れゆくは 気高き御国の御霊」「さぁいざ行かん 日出づる国の御名のもとに」といったナショナリズムを高揚させるような言葉が散りばめられているからだ。
話題が広がっているのは6月6日に発売された、RADWIMPSのニューシングル「カタルシスト」に収録されている新曲「HINOMARU」だ。彼らの公式ツイッターによると「新たな引き出しを発見した喜びと驚きと誇らしさ」が詰まった曲だ。
愛国的な歌詞?
「カタルシスト」はフジテレビ系のサッカー番組のテーマソングに決まっており、歌詞はサッカーを想起させるものになっている。
同じシングルに収録された「HINOMARU」は、「風にたなびくあの旗に 古よりはためく旗に意味もなく懐かしくなり こみ上げるこの気持ちはなに」と問いかけからはじまり、「受け継がれた歴史」や「気高きこの御国の御霊」が登場する。
「日出づる国の御名のもとに」という言葉もあり、タイトルからも日本への愛国心をテーマに歌ったことがうかがえる。
この歌詞にネット上で話題になり、賛否さまざまな声があがっている。
ファンからは「国歌にしてほしい」などと絶賛の声があがり、ノートに歌詞を書き写して、「はじめて書きたいと思って 夢中になって 書いてみた」とツイートする人もでてきた。
ネットでは「ゾッとしました」「またすごいもん出てきた」「(右派でもない人が)まっすぐな歌詞を書いたらこうなりましたという曲」と批判的な意見も多い。
ボーカルで作詞を担当した野田洋次郎さんの歌詞には、日本の歴史をテーマにした「にっぽんぽん」(味噌汁's名義で発表)などもあり、あえて保守色の強い言葉を使った「愛国的なものを皮肉る曲ではないか」という解釈もでていたが......。
野田さんは、6月8日15時過ぎ、こんな風にツイート。
曲について、次のように述べた。
「日本に生まれた人間として、いつかちゃんと歌にしたいと思っていました」
「世界の中で、日本は自分達の国のことを大にして歌ったりすることが少ない国に感じます」
「純粋に何の思想的な意味も、右も左もなく、この国のことを歌いたいと思いました」
ゆずが歌った靖国
愛国心と歌といえば、今春に発表された人気ミュージシャン「ゆず」の曲「ガイコクジンノトモダチ」が記憶に新しい。彼らもこれまでの作風とは異なり、「美しい日本」「国歌」「靖国の桜」といった保守色の強い言葉を歌詞に取り入れ、話題になった。
2020年の東京オリンピックを前に、エンタメと愛国、政治の距離が接近しつつあるということか。こうした動きをどう考えればいいのか。
評論家の辻田真佐憲さんは、ゆずの曲についての論考で、音楽と政治、エンタメと政治は昔から切っても切れない関係で結ばれていると指摘している。
この言葉が重要だろう。
受け手の側で「またこういうのが出てきたか」と受け流し、影響力を削ぐしかない。そしてその心構えを養うためには、歴史を知ることが重要だ。
政治と音楽が関係するパターンは出尽くしている。ノンポリだった音楽家が、突如政治的なテーマに取り組むことだってけっして珍しくない。(中略)
政治音楽、来たらば来たれ。政治と音楽をめぐる歴史は、われわれにとってよきワクチンになってくれるだろう。(現代ビジネスより)