エヴァ「残酷な天使のテーゼ」の高橋洋子さんが語るプレッシャー、そして夢。

「私の名より作品が広まってほしい」
高橋洋子さん・「残酷な天使のテーゼ」アルバムカバー
高橋洋子さん・「残酷な天使のテーゼ」アルバムカバー
King Records

高橋洋子、代表曲「残酷な天使のテーゼ」冒頭は"10代の声"で今も苦悩

人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)のオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」で知られる歌手・高橋洋子(51)。今やフランスや北京でライブ出演するなど海外人気も高い彼女が、9日放送のフジテレビ系音楽番組『MUSIC FAIR』(毎週土曜 後6:00)アニメソング特集に初出演する。「私はこれから『神話』ではなく『化石』になる」「自分の名より作品の名が広がれば」と話す彼女に、曲の持つ魅力や出会うまでの経緯について振り返ってもらった。

■「残酷な天使のテーゼ」は「今も進化」 大ヒットには反省と戸惑いも

 1995年に発売し、カラオケなどで歌われ続けて愛されている曲「残酷な天使のテーゼ」。ここまでヒットしている理由は主題歌となった『エヴァ』の持つ"作品力"だという高橋は「エヴァをきっかけに、アニメを習慣的に観るようになった方がいると聞いています。私自身もアニメを頻繁に観ている方ではありませんでしたが、エヴァをきっかけにアニメを観るようになりました。逆に『残酷な天使のテーゼ』をきっかけに、アニメを観るようになったと言ってくれる方もいてうれしい。ここまでヒットしたのは『エヴァ』の作品力で、それは、『エヴァ』がまだ終わっていないことだと思います」と説明。

 20年前に歌った曲について「今度『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』が収録されたマキシシングルが発売されるのですが、ここに至るにあたり、色んな方の想いや思い出が凝縮した曲になったと感じます。当初、聴いたものと今聴いたものでは、色んな人の想いが長年積み重なってきているので、違うものになっている」と変化があること明かし「一時(いっとき)だけのヒット作品は、その当時の思い出が蘇りますが、カラオケなどでずっと歌ってくださる皆さまは、『ずっと進行形のまま一緒に進化している』と個人的に思います」と分析した。

 大ヒットとなった曲との出会いに感謝はあるが、悩みもあったそうで「これを通して、考えることが増えました。最初は何となく歌っていました。その後に大きな盛り上がりを見せて、社会現象になって。それから色々と質問される機会が多くなったのですが、何も考えていない自分に気付いたんです。反省と戸惑いがあって、自分自身『もう一度、エヴァと向き合ってみよう』と思いましたね。そういうことをして、色々と学べましたし、進化ができました」と、自分も成長できたという。

■曲の冒頭は「10代の声で歌え」の指示に今もプレッシャー

 そもそも、この曲とはどう出会ったのか? 20年前を思い出してもらうと「ボイストレーニングで半年ほどLAに行って帰国したのですが、『仕事どうしようかな...』と不安を感じていた時期がありまして。その時に、CMなどでお世話になっていた作曲家の大森俊之さんに『歌の勉強もしてきたので、なにか歌いたいです』とお伝えしたら、『色んな人が歌うエンディングテーマの企画「Fly Me to the Moon」というのがあるから、推薦してみるよ』と言ってくださいました」と、最初は主題歌を歌う予定ではなかったと告白。

CDを出すにあたりキングレコードからリリースする必要があったが、「当時はキティレコードと専属契約をしていて『会社間の問題がなければ』ということでした。そこで会社(キティレコード)に聞いたら『良いんじゃない』とあっさり承諾していただいて。その後、お話を戻したら、当時のキングレコードの大月俊倫プロデューサーから『じゃ、主題歌も歌えば』と提案されたのがきっかけです。私の歌声を聞いて『主題歌もぜひ』と言ってくださったのは幸運でしたし、何が起きるかわからない世界だと思いました」と笑いながら当時を振り返る。

 20年前からライブや音楽番組で歌い続けてきた曲だが「24年前に収録した時、大月プロデューサーから冒頭部分を『10代の声で歌え』と言われまして。その時、無理をしたばかりに、今までずっと若い声で歌い続けなくてはいけないという、若干のプレッシャーがあるんです」と今でも当時の無茶振りに応えていることを明かし「普通の今の声で歌うと、印象が違って聞こえてしまうので、出だしのところは割とクリアな声で歌うように気を付けています。あと『神話になれ 人は愛を~』と続くところはノンブレスで歌っています。ここに入るのも気を付けていますね。曲が早いテンポなので、一個一個丁寧に歌うように心がけています」と同曲を歌う難しさを語った。

■"神話"になった名曲のこれから...「私の名より作品が広まってほしい」

 歌詞にはタイトルにも含まれている「残酷」や「パトス」「神話」など、聞き慣れないワードが並び、作品の世界観を表現している。高橋は「歌詞に『神話』というのがありますが、私はこれから『化石』になっていく」と笑いつつ「レジェンドになりたいですが、これからもこの曲は色んな方が歌っていく。ある国では『アニメの国歌だよ』と言ってくださっていて、これがもっと広がると『世界共通ソング』として多分平和になると勝手に思っています。世界平和に貢献、繋がるような活動をして行きたいです」と意気込む。

さらに「『高橋洋子』という名前ではなく、『残酷な天使のテーゼ』の曲が世界中に広がってほしい。この曲があるのはエヴァがあるからで、曲を聴く方は『聴いたの当時、何歳だっけ?』『あの良い思い出の時に歌ったな』と振り返ったりする。どんどん歴史を積み重ねて進化し続けてほしい。『私が』ではなく、原作も曲も含めた『作品』全部が世界中に広まってほしいです」と今の自分があるのは『エヴァ』のおかげであり、自分の名より作品の名が広がることを望んでいると胸の内を明かしてくれた。

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