名古屋城に「一緒に上がりたい」 障害者団体に聞く
名古屋市が名古屋城木造新天守にエレベーター(EV)を設置しない方針を決めたことについて、障害者団体が抗議している。21日には市役所前で、県内の障害者団体でつくる「愛知障害フォーラム」(ADF)のメンバーらが抗議活動をした。ADF事務局長の辻直哉さん(46)に、この問題に抱く思いを聞いた。
――なぜEVが必要なのでしょうか。
「現在、EVが最も安全に昇降できる手段です。河村たかし市長は『新技術によるバリアフリー』と言うが、具体的な形で示してほしい。それが安全で、みんなと一緒に上がれるものなら同意できます」
――「みんなと一緒に」が重要ですか。
「そうです。例えば家族みんなで上がれば、途中で会話ができます。でも1人だけ別の手段で上がれば、それができない。ただ上がればいいのではなく、家族や友達と一緒に行動し、わくわくや楽しさを共有するプロセスが大切だと思います」
「小学生が遠足で城を訪れることもあるでしょう。その時、車いすの子が1人だけ上がれず、(市が代替例として挙げる)バーチャルリアリティー施設に連れて行かれれば、つらい思いをします。そうしたことにも思いをはせてほしい」
――市は、天守内部にEVをつけるには、柱や梁(はり)を切断し、鉄骨などで補強する必要があるため難しいと説明します。
「市は『史実に忠実に』ということを優先しますが、『史実を参考に』ではダメなんでしょうか。史実を参考に外観を損なわず、障害者も高齢者も楽しめる城という考え方は、共存できるはずです」
――市はEVに代わり、ドローンで運ぶ案や、補助器具や人的支援で昇降する案を出しました。クレーン車とも言っています。
「ドローンの案は悲しかったですね。(完成予定の)4年後に実現するかわからないものを、行政が思いつきのように提案してはならない。人がかつぐことを全否定はしませんが、障害者も担ぐ人も怖いし、大事故の危険が伴います。また、クレーン車も、多くの人を運べるのでしょうか」
(朝日新聞デジタル 2018年05月22日 09時11分)