プーチン大統領、シートベルトせずにトラック運転。大統領府報道官「私は見ていなかった」

ロシアが併合したクリミアにかかる橋の完成祝いでハンドルを握ったが...
クリミア橋を渡るため、トラックに乗り込むロシアのプーチン大統領=5月15日
クリミア橋を渡るため、トラックに乗り込むロシアのプーチン大統領=5月15日
Alexei Druzhinin/TASS

ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナのクリミア半島とロシア側とを結ぶクリミア橋が5月15日に完成し、プーチン大統領自らトラックを運転して通行した。

ロシアによる実効支配を見せつけ、強いリーダー像を演出しようとしたプーチン氏だったが、思わぬ「けち」がついた。Twitterなどで「トラックを運転できる免許を持っているのか」「シートベルトをしていなかった」などの疑問が相次いで噴出したからだ。大統領府は疑惑を否定するなど、「火消し」する事態になっている。

疑惑が持たれているのは、橋の完成式典があった5月15日での出来事だ。ロシアの民間通信社「インタファクス」によると、プーチン大統領はこの日、ノーネクタイにジャンパーというラフな格好で式典に出席。「素晴らしい記念日を心よりお祝い申し上げます」「これは歴史的なことです。なぜなら、このような橋の建設は、帝政ロシア時代の人たちも夢見ていたからです」と述べた。

開通式であいさつするプーチン大統領
開通式であいさつするプーチン大統領
AFP/Getty Images

橋はロシア南部のクラスノダール州タマニとクリミア半島のケルチを結び、全長19キロメートルにもおよぶ。クリミア併合を既成事実化するため、ロシアが威信をかけて2016年に建設を開始。投じた予算は約70億ルーブル(約120億円)にも達し、当初の予定より半年も早く完成にこぎつけた。

完成したクリミア橋
完成したクリミア橋
Mikhail Svetlov via Getty Images

式典後、プーチン氏はロシアの自動車メーカー「カマズ」に乗り込み、エンジンを始動。橋の建設にかかわったとみられる作業員2人を助手席に乗せて発車させ、タマニ側からケルチ側まで16分かけて橋を通過した。

コンクリートミキサー車やクレーン車など約40台の重機を引き連れてハンドルを握る姿は、まるで実効支配を見せつけているかのようだった。

トラックに乗り込むプーチン大統領
トラックに乗り込むプーチン大統領
POOL New / Reuters

通行の様子はロシアの国営メディアなどが中継したが、それを見たロシア人たちは「プーチン氏はトラックを運転できる免許を持っているのか」「シートベルトをしていないのではないか」とTwitterなどに投稿した。

こうした動きを受けて、記者らも大統領府のペスコフ報道官に質問。ペスコフ氏は免許について「大統領はトラックを運転できるカテゴリー『C』の免許を持っている。約20年前に取得したと思う」と釈明した。

だが、シートベルトについては「シートベルトをしていたかどうか、私は見ていなかった」と答えるにとどめた。

国営のニュース専門チャンネル「ロシア24」の生中継では、運転中のプーチン氏や同乗者はシートベルトをしていない様子が映し出されている。

橋は翌日から一般の乗用車などが利用できるようになり、2018年秋には貨物自動車も通行できる見通し。2019年には鉄道部分も開通する予定という。

クリミア半島をめぐっては2014年3月、地元の自治体がウクライナからの独立とロシアへの編入について是非を問う住民投票を実施。賛成票が9割を超えたとして独立宣言した直後、プーチン大統領が併合を宣言した。その後間もなく、ロシア政府が橋の建設計画も発表した。

これに対し、ウクライナは憲法の規定により、領土変更は国民投票によってのみ決まると主張。住民投票は無効だとして編入を認めていない。

このため、自国民がクリミアに立ち入ることについても、ロシアによる実効支配を認めかねないとして一定の制限を設けている。だが、すでにウクライナ人の何人かは橋を渡り、その模様をYouTubeに投稿。ウクライナ政府は彼らに罰金の支払いなどを検討する事態になっている。

ポロシェンコ大統領は橋の完成について、「ロシア人にとっては衰退に役立つものとなろう」と皮肉を述べた

ポロシェンコ大統領
ポロシェンコ大統領
Gleb Garanich / Reuters

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