アイドルグループ「TOKIO」の山口達也メンバー(46)が女子高生に対する強制わいせつ容疑で書類送検された事件で、報道機関が「メンバー」という呼称を使っていることが、ソーシャルメディアで話題になっている。
TOKIOに所属する各タレントに対し、メンバーという呼び方は聞き慣れないからだ。報道各社はなぜメンバーという言葉を使っているのか。
各報道機関は事件を報じる上で、用語の使い方についてルールを設けている。関係者の人権に配慮するなどの理由からで、各社が独自で定めているものの、ほぼ同じような取り決めになっている。
例えば、容疑者という呼称は、逮捕または指名手配された場合に使う。逮捕などされたとしても、この段階では、あくまで罪状は「容疑=疑い」であり、罪が確定しているわけではないからだ。
呼称は刑事手続が進むに従って変わり、起訴された後から判決が出るまでは原則「○○被告」、刑が確定した後は「○○受刑者」「○○服役囚」「○○死刑囚」といった表現を使っている。
一方、書類送検の場合は「容疑者」は使わないようにしている。そもそも書類送検は、警察が任意で取り調べ、起訴の有無を判断する検察庁に書類という形で送る手続きだ。
身柄を一時的に拘束する「逮捕」ができるのは、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合に限られる。一方、逃亡や証拠隠滅の恐れはないが、法律違反の疑いがあって捜査する場合、警察は対象者を任意で事情聴取するなどして書類にまとめ、検察庁に送る(送検)。
警察が逮捕を伴った身柄付きの送検にするのか、任意捜査によって書類送検とするかは、あくまで逃亡や証拠隠滅の恐れという観点から判断している。
だが、書類送検される事件は結果的に、逮捕を伴う事件よりも刑事処分が軽いことがあるため、報道機関は書類送検の場合には人権に配慮して「容疑者」呼称は使わず、「会社員の男」などと、職業などの肩書きを用いながら匿名で報じる。
山口メンバーについて、報道各社が匿名ではなく芸名での報道に踏み切ったのは、山口メンバーが著名人であることから、事件に対する社会的関心の高さや影響などを考慮したのが理由とみられる。
ただ、芸名のみの呼び捨てを避けるために何らかの肩書き呼称が必要となり、その結果、TOKIOの一員という職業上の肩書きとして「メンバー」という言葉を使ったとみられる。