財務省次官のセクハラ疑惑。女性記者の録音やデータ提供、弁護士の見解は?

テレビ朝日の対応や財務省の調査手法を批判しました。
記者会見する弁護士グループ=4月19日、参院議員議員会館
記者会見する弁護士グループ=4月19日、参院議員議員会館
Kazuhiro Sekine

財務省の福田淳一事務次官(58)がテレビ朝日の女性記者にセクハラ発言をしたとされる問題で、記者が取材中の会話を録音したり、その音声データを外部である週刊誌に提供したことの是非がTwitterなどで話題になっている。

これに対し、財務省の調査が不適切だとして撤回を求めている弁護士グループは、録音も音声データの外部提供も「やむを得ない措置だった」と、女性記者の行動を擁護した。

弁護士グループは、早田由布子、太田啓子両弁護士ら5人。財務省が調査の一環として、被害を受けた女性記者らに名乗り出ることを呼びかけたり、その窓口として財務省委託の弁護士を指定したりしていることを問題視している。

5人は「被害告発者のプライバシーが十分守られるのかが不明」として、ほかの5人の弁護士とともに、インターネットの署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で調査の撤回を呼びかけている。

5人は4月19日、財務省を訪れ、秘書課職員2人に署名を提出。東京都内の参院議員議員会館で記者会見した。

■録音、データ持ち込みへの見解は?

テレビ朝日の女性記者が福田氏との会話を録音したことについて、早田氏は「記者倫理の問題はともかくとして、取材の中でセクハラを受け、自分の身を守るためにその会話を録音したというのは必要であると言わざるを得ない」と述べた。

自身、セクハラ関連の訴訟を多数こなした経験があるといい、「裁判の判決で、録音がある部分しか事実認定されなかったという事例をたくさん知っている。録音はセクハラ、パワハラを立証するうえで必要不可欠な証拠であると言わざるを得ない。日常的にセクハラを受けているという相談を受けたときには、録音してくださいとアドバイスします」と女性記者を擁護した。

女性記者が録音した音声データを週刊新潮に持ち込んだことについても、「いったん上司に相談して、テレビ朝日が放送できないかと探った。でもそれができなかったから週刊新潮という外部に持ち込まざるを得なかった。これは公益通報と趣旨は同じ。内部で問題にできなかったので、必要やむを得ない措置」と指摘した。

その上で、「テレビ朝日は持ち込んだことは不適切と言ったが、私の受け止めとしては、上司が握りつぶした結果、新潮に持っていかざるを得ない結果を作ってしまったわけであり、そういう組織のあり方こそが不適切だ」と語った。

■テレビ朝日の対応を批判

テレビ朝日に対しては、ほかの弁護士からも批判の声が上がった。足立悠弁護士は「テレビ朝日は記者会見を生中継しなかったんですよね。なぜ自分のところで生中継できない時間帯に記者会見を開いたのか」と話した。

内山宙弁護士も「テレ朝の上司が男性だったのか、女性だったのかはわからないが、女性の方が幹部に多ければ、果たしてこういう対応になっただろうか。女性の比率が管理職やトップに少ないというのも問題の一つの背景ではないか」と述べた。

■報道各社への批判・要望も

報道各社に対する批判や要望も相次いだ。太田氏は「メディア関係者からは『(セクハラは)当たり前のようにあった。それをかわすことも含めて仕事であって、それができて一人前と言われた』と聞いた。そうしたことを黙認している雰囲気は正直あるんだろうと想像する。取材先に若くてきれいな女性を充てることがあったのかなあとも。それはやっぱり業務としてはあるべき姿ではない」と語った。

角田由紀子弁護士は「メディア各社は連携して動いて欲しい。相手は権力。1社、2社が言うとまた攻撃の対象になる。記事を『抜く、抜かない』の話ではなく、自分たちのところで働いている人たちの人権をどう守るかという問題に関しては、利害は一致しているはずなので、手を携えて欲しい」と要望した。

■財務省の調査手法に「ゾッとしました」

一方、財務省の調査手法について、足立氏は「この問題は『怖い』というのが最初の印象。自分より弱い立場の記者に対し、加害者とされる側から『名乗り出ろ』と何のためらいもなく言う。ぞっとしました」。

角田氏も「(被害者とされる人、加害者とされる人の)双方から話を聞くというのはそれはそうだが、今問題なのは、被害者の方からどういうふうにして話を聞くかということ。それがちっともわかっていなくてびっくりでした」。

女性記者たちの「通報」窓口として、財務省が自らの顧問弁護士事務所を指定していることについても疑問が投げかけられた。

足立氏は「財務省は、窓口の法律事務所は『第三者性』があるんだとしきりに強調していた。でも顧問契約を交わしている弁護士は思いっきりそっち(財務省)側の人。そこに名乗り出ろというのはありえない。弁護士は、間に立って中立的な立場で判断を下す職業ではない。中立を確保するのであれば、顧問先と関係ない弁護士を立てるべきだ」と呆れた様子。

内山氏も「顧問弁護士の事務所を通報窓口にしておきながら、匿名性は担保し、被害者の利益を尊重しますというのは、利益相反。顧問弁護士は財務省の利益のために働くはず。その人たちが『セクハラ受けました』と名乗り出る人の証言をつぶす可能性がある。それをするのが顧問弁護士の役割ですから。でも財務省の職員はピンときてなかった」と話した。

財務省がホームページ上で福田氏の見解を掲載したことについて、太田氏は「福田事務次官の個人の見解を財務省のホームページにあのように掲載する適否も問われるべき。告発した方から見れば一方的な見解。ホームページは福田氏のブログじゃない。片方だけの言い分をあのように載せるのは、やっぱり何かのお墨付きを与えるようにみえる。このようなことは告発した側はできないことで、公平性を欠いている。丁寧な体裁をまといながらプレッシャーを与えることが目的だったなと思います」と批判した。

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