「セクハラ発言」疑惑を報じられた財務省の福田淳一事務次官について、麻生太郎財務相が4月18日午後6時過ぎ、福田氏の辞任を認めたと発表した。
同日午後7時前、福田氏は財務省内で記者団の取材に応じた。冒頭、福田氏は辞任理由について以下のように述べた。
週刊誌に掲載された私に関する記事については、事実と異なるものと考えており、裁判の中で引き続き争って参りたいと考えています。
他方、財務省が厳しい状況に陥っている中で、さらに私のことでこのような報道が出てしまったこと自体が、不徳の致すところであります。
また、報道後の現状を鑑みると、財務事務次官としての職責を果たすことが困難な状況と私自身が考え、先ほど麻生財務大臣に対して辞職を申し入れました。麻生大臣からはご了解をいただいたところであります。私のことでご迷惑をおかけしたすべての関係者の方にお詫び申し上げたいと思います。
報道陣との主な一問一答は以下の通り。
――セクハラ疑惑の音声については
自分の声というのは、自分の体を通じて聞くので。私はずっと、録音された声が自分の声か、よくわからないので、そういう風に申し上げました。ただ「福田の声に聞こえる」という方が多数おられることは知っています。
――報道されたような、女性記者との会合をした記憶はあるのか。
ここにおられる(記者には)「財研」(財政研究会。財務省の記者クラブ)の方が多いかと思いますが、新聞記者の人とは男女問わず...というか、財研は男性記者が多いので、男性記者を中心に会合を持っていることはあります。1対1での会合を持つことも、もちろんあります。ただし、あそこに書かれているような、あーんな発言をしたことはありません。
――あのお相手はどなただったと記憶しているか?
わかりません。
――あの当日の記憶はないのか。
「あの当日」というのは、いつのことでしょうか。
――録音のような発言をしたことはないか。
あんなひどい会話をした記憶はありません。
――(4月16日発表の)コメントを見ると接客業の女性ととれるが。
いや、わからないから。わかりません。自分の行動について、一般的に正直に矢野官房長に申し上げただけです。あの記事が、そういうものであるかどうかもわかりません。自分では。
――自身の記憶にはないと。
いやいや、そうじゃなくて、あそこでそういう、その接客業の人とあると、一般論で申し上げているので、そのことがあの記事の元になっているということを言っているつもりはありません。
――自身の発言であれば、自身の会話かどうかは覚えていると思うが。
いろいろな人といろいろな会話をしているので。しかも、会話の全てを順番にとっている風にはみえませんので、部分の物をくっつけているようにみえますので。そういう意味では覚えています。
――日付の心当たり、手帳などで確認したか。
あそこに書きました通り、4月8日だったですかね。グラビアの写真に書かれた日のことは、もちろん日付が書いてあるので確認しました。そこで相手方に確認したことはコメントの中に書きました。
――それは民間企業の女性の方ですよね
はい。
――女性記者とのやりとりとされるテープ日の記憶は。
日付がないのでわかりません。
――会話内容から記憶をさぐったことは。
一生懸命読みました。テープで予算が成立したら云々とある。一方、ゴミの運び出しの記述もあって、それは前後関係が逆なんで、どういうことかよくわからないというのが正直なところです。
――辞任の理由は、財務省がこういう状況の中で報道が騒がせたことで去って、あくまでセクハラ音源については認めないと。
報道が出ること自体不徳の致すところだと考えています。本日の状況などを見ると、やっぱり私に関する議論がこの役所の職務を遂行する上で問題となっており、そういう状況では、いまの職責を全うすることができないと自分で判断いたしました。
――コメントの中では、被害に遭われたとされる女性記者に名乗り出て協力して欲しいと。そのことについて批判が出ている。
そこは担当者が、こういう問題の処理の専門家に聞いて、被害者の方にも聞くんだというのが通常であるという話を聞いてああいう整理をしたのだと思います。
――担当する弁護士事務所は財務省の顧問弁護士事務所だ。公正でないと受け取られても仕方ないのでは。
私自身は取り締まりを受けるほうなので。あの調べ方の対象になるので、「こういう調べ方で行きましょう」ということについて、そんなに自分自身の意見を申し上げたわけじゃないんですけれど。
財務省なりに、あるいは財務省の担当者なりに「こういうときには両方調べるのが普通の例である」ということを研究の上で提案したのだろうと理解している。
――辞任はいつ付けか。
閣議の了解がいるので来週だと思います。総理や大臣がおられる時ではないかと。そこは官邸にお任せしている。
――辞任理由で森友問題に関する疑惑は一切関係ないか。
まあ、その、なんというか、あらゆることに責任がありますので。個別の問題について関係ないというのは、ちょっと真面目な態度じゃないと思いますのでなんとも言えませんが、直接の原因は私の報道をきっかけとする現在の状況が今の仕事を続ける、全うすることができない状況になってしまったということが辞任の理由です。そう、大臣にも申し上げました。
■「週刊新潮」がセクハラ疑惑を報道
福田氏をめぐっては、4月12日発売の「週刊新潮」が複数の女性記者への「セクハラ発言」疑惑を報道。辞任や更迭を求める声が高まっていた。
福田氏は財務省の調査に対して「自分の声かわからない」「女性記者とやりとりはない」などと、疑惑を全面否定していた。
財務省は16日、該当する女性記者からの調査協力を財務省の記者クラブに求めていたが、こうした対応について批判の声が高まっていた。
日本新聞労働組合連合(新聞労連)は4月18日に声明を発表。「被害者本人」に名乗り出るよう求める手法について、「事を荒立てるな」などと忍耐を強いるのは「セクハラ容認と同じ」だとして、報道各社にも毅然とした対応を求めた。
弁護士の寺町東子さんはハフポスト日本版の取材に対して、「セクハラを申告した記者個人を矢面にたたせることになる」と指摘。同時に、組織として対応しない報道機関の「安全配慮義務違反」を指摘していた。
財務省事務次官が任期途中で辞任するのは、1998年に旧大蔵省で接待汚職事件が発覚した時以来、20年ぶり。
財務省をめぐっては、森友学園をめぐる決裁文書の改ざんやセクハラ疑惑の報道など不祥事が相次いでおり、麻生財務相の責任を問う声もくすぶっている。