財務省の福田淳一事務次官が女性記者にセクハラ発言をしたとされる問題。セクハラを受けた女性記者が名乗り出て調査に協力するよう求める財務省の対応に批判が広がっている。この調査方法の撤回を求める署名がネット上で始まり、4月18日午後4時の時点で1万4000筆を超えた。
問題の発端は週刊新潮の報道だった。同誌は福田次官のものとする音源も自社サイトで公開した。今週発売号でも続報を掲載しており、さらに追及の構えをみせる。
一方、福田次官は財務省の調査に対して「自分の声かわからない」「女性記者とやりとりはない」などと全面否定した。
財務省は「福田事務次官との間で週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいらっしゃれば、調査への協力をお願いしたいこと。」などとする文書を報道各社に配布し、調査への協力を求めている。
麻生財務相も被害者が名乗り出ない限り、セクハラと認定できないという見解を崩していないが、調査方法に政権内部や自民党内からも批判が続出している。
《野田聖子総務相は17日の記者会見で財務省の対応を問題視し、「被害者の立場に立てば高いハードルがある」などと、麻生氏と菅義偉官房長官にも伝えたことを明らかにした。
17日の自民党役員連絡会では、橋本聖子参院議員会長が「財務省の対応は国民の感覚とはずれている。襟を正してほしい」と批判。同党の二階俊博幹事長も会見で「財務省が弁解に終始しないといけないことを大いに反省してもらいたい」と苦言を呈した。》(朝日新聞4月18日付朝刊)
ウェブ上でも批判を受けて、セクハラ問題に詳しい弁護士らによるオンライン署名がはじまった。
署名では「加害者であると告発された本人がトップの職を務める財務省が委託した弁護士らとなっており、第三者性が担保」されていないことを批判。
「匿名で申告できるとの記載もなく、調査方法の趣旨、結果がどのように利用されるか、及び被害告発者のプライバシーが十分に守られるのかが不明で、コンプライアンス上も問題があります」と対応を指摘した。
財務省が公表した調査結果についても「加害者とされる当事者の一方的な言い分を財務省名で公表することは、そのこと自体、被害告発者への圧迫」となるとしている。
また福田次官が報じた週刊新潮を相手取って名誉毀損で訴訟も検討しているなどと発言しているなかで、被害者が名乗りでないことは当然のことであるとする。
少なくとも、被害告発者が匿名でも十分な保護の下で被害申告をすることができる相当な調査方法が必要であるとして、下記の2点を財務省に求めている。
・被害告発者に名乗り出ることを求める調査方法はむしろ有害であり、財務省に対し、このような調査方法を撤回するよう求めます。
・私たちは、財務省に対し、被害告発をした女性を守りながら福田次官の発言について適切な調査を行い、ひいては、性別にかかわらず個人の尊厳が守られる社会の実現のために尽力することを求めます。
賛同する署名は4月18日午後4時の時点で1万4000筆を超える広がりを見せている。