ロシア郵便がドローンによる配達の実験をしたところ、ドローンが離陸直後にアパートの壁に激突、大破した。ロシアの複数のメディアが伝えた。地元の有力者やマスコミが多数見守る中での「惨事」に、ロシアのソーシャルメディアでは衝撃が走っている。
ロシアのシベリア東部にあるウラン・ウデ。バイカル湖にも近いこの町で4月2日、ロシア郵便によるドローンを使った配達実験があった。
広範囲に集落が点在するこの地域では郵便事情がよくない。そうした状況を先端技術で解決しようとの狙いがあった。
郵便配達をめぐるドローン実験は、ロシアではこれが初めてだった。ロシアのインターネットメディア「ガゼータ・ルー」によると、実験には地元の行政トップやメディア関係者のほか、モスクワからロシア郵便幹部も駆けつけた。
さながらセレモニーのような状況の中、2キロの小包を抱えた6枚羽のドローンが、35キロ離れた集落に向けて離陸した。ところがその直後、ドローンは少し上昇したかと思うと急旋回し、3階建てのアパートの壁に激突。そのまま落下し、大破した。
ロシアの大衆紙「エムカー」は、「集まった地元行政トップやジャーナリスト、モスクワからやってきた招待者たちは数秒間にわたって身動きができず、信じられないといった表情で無言だった」と当時の様子を伝えた。
原因については、強風によってドローンがあおられたとの説や、現場近くの住宅で使われていたWiFiの電波が機体の通信に影響を与えたのでは、との話が出ている。さらには、ドローンは欠陥品で、メーカーが関与した汚職疑惑まで報じるメディアも出始めた。
地元メディアは以前、ドローンの製作費は120万ルーブル(220万円)と伝えていたが、地元行政トップのアレクセイ・ツィデノフ氏はFacebookに「行政もロシア郵便も一切費用は出していない」と投稿。その上で、「我々のドローンは飛んだ!これは失敗ではない。これからも続けていく」などとつづった。
これに対し、「国民ははるか前から何も信じていない。国がやることはいつだって、ロシアの技術が嘲笑の対象になっていることを示している」「本当に笑える。ピッツァの配達もできるかな」などと皮肉るコメントの一方、「正しい!ドローンは必要不可欠なもの。人類の歴史の中では失敗することもある」などと擁護する意見も並んだ。
ロシアの郵便をめぐっては、宅配物の到着が1カ月以上かかったり、途中行方不明になったり、中身が抜き取られていたりするなどの問題が常態化している。数年前には、インターネットの海外サイトで購入した小包が増加し、空港にあるロシア郵便の施設が処理しきれず、倉庫に荷物が山積みとなる事態も生じた。
国民からの不評を受け、郵便側はシステムの近代化に着手。東芝の関連会社から税関システムを導入するなどしている。ドローンによる配達実験もこうした改革の1つとみられる。