親を失ったチンパンジーの赤ちゃんが、パイロットの膝に乗って飛行する動画が、3月に話題になった。
とても微笑ましい光景だが、パイロットは「これは決して起きて欲しくないことだ」と言う。
動画を投稿したのは、ベルギー人のパイロット、アンソニー・カエレさん。アメリカの公共放送PBSのインタビューで、話題になった動画について語った。
コンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園で働くカエレさんは、普段は密猟者を取り締まるレンジャーを上空から助けたり、野生生物調査をしたりする。
年に数回、親を殺されたサルをリハビリセンターに運ぶこともある。
今回飛行機で運んだチンパンジーの赤ちゃんムッサは、密猟者から保護された。密猟された大人のチンパンジーは食料として殺されることが多い。残された子どもの多くは、ペットとして売られるという。
PBSによると、ムッサのように保護されたサルたちの多くは、飢えやストレスを感じている。また、ロープできつく締められたり、狭いケージに閉じ込められたりしたために怪我をしているサルもいる。
カエレさんは、飛行中にムッサをを押さえつけなかった理由をFacebookにこう綴る。
「なぜ、ムッサを飛行中ケージに入れなかったかったのかと、多くの人が聞きます。ストレスの多い飛行中に赤ちゃんザルが必要としているのは、檻の中に閉じ込められることではなく、ハグや深い思いやりなのです」
リハビリセンターには現在、70匹以上のチンパンジーと100頭近くのサルが保護されているという。カエレさんは3月31日、現在のムッサの写真を投稿した。
「私の"息子"のムッサは、元気です!どうかこの小さくて可愛い子が幸せになりますように!」
ムッサは密猟者の手から救い出されて、幸せな生活を送っているかもしれない。しかし、もっと良い生活を送っていたはずだったと忘れないで欲しい、とカエレさんは語った。
「動画を見て、かわいい動画だね、で終わらないで欲しい。動画で伝えたいのは、小さなチンパンジーは私の膝の上ではなくお母さんと一緒にいるべきだというメッセージです」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。