平昌オリンピックで活躍したカーリング女子チーム「LS北見」のトレードマークといえば、「そだねー」だ。試合中によく声を掛け合っていたことで、日本中に知られるようになった。
この「そだねー」という言葉を北海道帯広市の菓子メーカー「六花亭製菓」が3月1日、特許庁に商標登録を出願していたことがネット上で話題になっている。
指定商品は「菓子及びパン」。六花亭の看板商品といえば北海道土産として定番の「マルセイバターサンド」だが、新商品の「そだねーバターサンド」が発売される日も近いのか...。
ハフポスト日本版は六花亭に取材するとともに、こうした商標登録が可能なのか知的財産権の専門家にコメントをもらった。
■六花亭「商標を独占するつもりはない」
六花亭の担当者は22日、ハフポスト日本版の取材に対して、LS北見が活躍したことを受けて「そだねー」をモチーフにした菓子の商品化を目指していることを認めた。以下のように答えた。
「北海道弁をモチーフにした『めんこい大平原』や『なんもなんも・パルメザン』などの菓子をこれまでも製造しており、その一環です。まだ具体的な商品は決まっていません。北海道以外の業者が商標を抑えて自由に使えなくなることを避けるために、申請しました。商標を独占するつもりはなく、他の業者からも申請があれば許可を考える仕組みを考えたい」
特許庁の審査結果が出るのは、夏頃になる見込みだという。
ネット上では六花亭の商標出願に対して、「大手が登録して、皆が無償で使えるならその方がいい」と賛同する声もある一方で、「同じ北海道とはいえ、なぜ帯広の会社が?」「大切な思いが詰まった言葉を、売名行為に使うな」と反発する声も出ている。
■日常的な言葉も登録できるの?
しかし、「そだねー」のように日常会話でよく使う言葉や流行語が、商標として認められるのだろうか。
ハフポスト日本版は、「楽しく学べる『知財』入門」などの著作がある弁理士で東北大学准教授の稲穂健市さんに取材した。
稲穂さんは23日、日常会話の言葉を商標登録する例はあるとした上で、流行語を商標として出願することが「ブランド戦略的にはマイナスに働く可能性もある」として、以下のようにコメントした。
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日常会話でよく使う言葉が、商標として認められている例は、たくさんあります。たとえば、アントニオ猪木さんの権利管理会社コーラルゼットは「元気ですか」を商標登録しています。小林製薬株式会社や株式会社そごう・西武など複数の会社が「お元気ですか」を商標登録しています。
基本的な考え方として、「商標」は、発明や著作物のような「創作物」ではなく、「選択物」と考えられているためです。無限に存在しうる文字や図形などの中から「選択」している、という考え方です。
商標登録のための要件は色々とありますが、そのひとつとして、他人の商品やサービスと区別できることが必要です。今回の「そだねー」の商標登録出願における指定商品は「菓子及びパン」ですので、「そだねー」がすでに菓子やパンのパッケージなどで、その商品の内容などを表す意味合いで使われていなければ、この要件はクリアできるものと考えられます。
また、他人の業務と出所混同のおそれがある商標も登録できないとされています。そのため、「そだねー」を使ったよく知られた商品やサービスが存在していなければ、その点でも特に問題ないものと思われます。
さらに、不正の目的で出願された商標も、公序良俗違反などを理由として登録されない方向性となっています。しかし、三陸地方の方言で流行語にもなった「じぇじぇじぇ」を岩手県久慈市の老舗菓子店が商標登録している例がありますし、今回の出願の指定商品がカーリングやオリンピックとは何ら関係がないことを考えますと、その点でも問題ないと判断される可能性が高いような気がします。
ただし、他人が先に類似の商品やサービスを指定して「そだねー」や、それに似た商標を出願している場合など、上記以外の何らかの登録要件を満たさない場合は、当然のことながら登録はなされません。
なお、出願しただけの段階であるにもかかわらず、出願者の六花亭がすでにネットで炎上している状況を考えますと、流行語を商標として出願すること自体、ブランド戦略的にはマイナスに働く可能性もあることに留意する必要があります。
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