東京・渋谷駅からすぐの好立地に誕生した渋谷キャスト。この東急電鉄などが開発したのビルの13階には、「Cift」(シフト)の住人たちが拡張家族として暮らしている。
Ciftには、約40世帯、45人のクリエイターが共同生活している。メンバーは経営者、シェアリングエコノミーの専門家、ノンフィクション作家、編集者、映画監督、美容師、会社員など様々だ。彼らは、仕事も拠点もセクシュアリティも多様だ。
「拡張家族」の暮らし、どうですか?
実際にCiftで1歳児の子育てをする神田沙織さんに話を聞いてみた。彼女がCiftでシェアする一室は、「子ども部屋」と呼ばれているという。
■1歳8カ月のママ、神田さんの場合
神田さんは、3Dプリンターの会社やセレクトショップのPRを経て、ものづくり系女子、フェミニストとして活動。地元の大分でもゲストシェアハウスを持っている。
——神田さんが、Ciftに住むことになったきっかけは?
夫が(Cift発起人の)藤代さんと建築の仕事をしていたんです。
その後、夫婦で起業したのに、子供が生まれて、私はいろんな会議に出られない。夫に嫉妬を感じてしまっていたところで、藤代さんに「子供がいるからこそチャレンジできる場所、用意したよ」といわれたんです。
「家族3人で住んでみたら」といわれたけど、今の家にも住みながら、多拠点で暮らそうと。住まないけど借りられる、ルームシェアできる賃貸。人がいるところに子連れで行っている感じです。
——Ciftでは1つの部屋を4人でルームシェアしているそうですね。一緒に住んでいる人は?
藤代さんに「素敵な人がいるから紹介したい」と言われて、寺井暁子さんというノンフィクション作家の方と住んでます。アッコさんは2017年の7月に出産したので、子育てのことなら「私、アッコさんのこと手伝える」と思いました。
(一緒の部屋に)ここに独身の人も入ってくれたら...と思っていたら、いまは教育やLGBTの活動をしているメンバーたちとも一緒に住んでいます。
Ciftは、共通の価値観にコミットしているので、「家族のお見合い」みたいな感じですね。
——どんなふうに暮らしていますか?
9月に借りて、月の半分くらい泊まっていますね。その日、人のいる場所に帰ればいいと思っていて、夫が出張のときや帰りが遅いときは、Ciftに帰ります。
出産して、「親子」とか「母親」とかの世界の殻に閉じ込もっていたけれど、それが破れました。朝は、前日に誰かが多めに作ってくれた残したごはんを食べて、夕ごはんは私が作るからみんなに食べさせています。
ごはんも余ったら、ふりかけかけておにぎり作っておけば、誰か食べます(笑)。
——たくさん家族ができて変わったことは?
どれだけ気を使ってもどうせ汚れますし、上手にできないことに寛容になれますね。
若い男性と接しているから、子どもの口癖が、「すごいっす。かっこいいっす」になったり(笑)。
家族が、2+1=3じゃなくて、一気に45人になった感じ。45人にとっても「自分の子どもができた」と思ってもらえています。
——何か気づいたことは?
洗濯機、いらなくない? と気づきました(笑)。持っている人とシェアすればいいから、すべてを揃えなくていい。洗濯機は、持っている人から借りています。
——たしかに(笑)。「拡張家族」のみなさんは、どんな交流をしているのでしょうか?
月に何回か家族対話や会議をしていますが、まだ全員が集まったことがないです。
19部屋の中に約40世帯が住んでいて、みんな多拠点でいろんな肩書きがあるので、合わせると100拠点、100職種くらいになります。小布施、新潟、メキシコ......。いろんなところに拠点があります。
それぞれの部屋は、大きな家族の個室という感じですね。
1歳8カ月の子どもが、誰かと遊んでもらいたくなって、別の部屋をノックするんです。部屋のドアにはストッパーが置いてあって半開きになっていたりして、「入っていいよ」的な感じですね。
「今日は(Ciftに)誰もいないねえ」となったり、誰かが帰ってきたりしたら、子どもがダッシュで迎えにいったりしています。
——「拡張家族」での暮らし、どうですか?
(核家族化が進んで)家族の構成人数が減っているけど、家族ってそれだけなんですか? と思うようになりました。
「誰でもできることじゃないよ」といわれることもあるけど、「人と縁を結ぶ場所で子どもを育てたい」と思って、自分なりになんとかしようと思った結果、ご縁があった。
別に、渋谷に住もうとか、大人数で住もうと思って、ここに来たわけじゃないんですけど、ここのメンバーと一緒に、子育てとか仕事とか、人生を切り分けずに生きること、そういう風に意識を広げて生きることができるんだなって気づきました。
——Ciftで子育てしてみて、今感じることは?
子どもが生まれる前は、高輪のマンションに住んでたんですけど、エントランスから階段を降りる作りだったんです。
子どもという不確実な存在が入ってきた瞬間に、そこは大人のための社会だったんだなと気づきました。これまでの自分の行動範囲の中に、そのまま子供を連れてこられるわけではないんだなと。
いまは、子どもの視点を持って、拡張したいと思っています。子どもと一緒に行動範囲を広げたいですね。子どもに誰もが見たことがない景色を見せてあげたいですね。
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神田さんが企画したイベント「子連れ100人カイギ in SHIBUYA CAST.」が、Ciftのある渋谷キャストで3月21日(祝)、22日に開催予定だ。
21日午後には、渋谷区で子育て支援の活動をする「渋谷papamamaマルシェ」による、多世代で楽しい自由な子育てについて語り合う『子連れdeワイがやカイギ』(定員30組)のセッションもある。
待機児童の問題や、熊本市議が子連れで議会に出席して物議を醸したのをきっかけに生まれた、子どもと一緒に参加できる「子連れ100人カイギ」。渋谷区民でなくても参加できる。ふらっと立ち寄ってみてもいいだろう。ハフポスト日本版も後援している。
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「家族のかたち」という言葉を聞いて、あなたの頭にを浮かぶのはどんな景色ですか?
お父さんとお母さん? きょうだい? シングルぺアレント? 同性のパートナー? それとも、ペット?
人生の数だけ家族のかたちがあります。ハフポスト日本版ライフスタイルの「家族のかたち」は、そんな現代のさまざまな家族について語る場所です。
あなたの「家族のかたち」を、ストーリーや写真で伝えてください。 #家族のかたち#家族のこと教えて も用意しました。family@huffingtonpost.jp もお待ちしています。こちらから投稿を募集しています。
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