産後1カ月以内に仕事に復帰した人が44.8%ーー。
有志の女性経営者らが設立したワーキンググループ「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」が2月22日、厚生労働省で会見し、フリーランスの働き方の現状を報告。出産や子育てに関するセーフティーネットの必要性を訴えた。
働き方の多様化が進み、企業に所属しないフリーランスの人々は、1100万人を超えたといわれている。そのうち女性は、49%の550万人にのぼる。
アンケートは2017年12月、「現在20〜50歳までのフリーランスまたは法人経営者等であり、雇用関係にないため産休・育休を取得できず、働きながら妊娠・出産・育児をした経験のある女性」を対象に実施した(有効回答数:353)。
アンケートで浮かび上がったのは、フリーランスや経営者の女性が直面する、妊娠・出産の厳しい現実だった。
産後1カ月以内に44.8%が仕事復帰
妊娠・出産後も仕事を継続した人で、「産後1カ月以内に仕事に復帰した人が44.8%。産後2カ月以内に復帰した人は59%」にのぼった。
一般的に「産休」は、パート社員や派遣、契約社員も取得でき、その期間は産前6週間・産後8週間とされる。フリーランスや経営者には、母体保護の観点からみても産後に十分休めていない様子が浮かび上がる。
産前産後の所得補償がない
回答者全体の63.1%が扶養ではなく自身で健康保険を納付しているにもかかわらず、出産手当金の給付を受けているのは19.3%にとどまった。国民健康保険の出産手当金は、任意給付になっているが、実態はほぼ給付されていないからだ。
また、会社員であれば産育休中に免除される社会保険料も、フリーランスや経営者の場合は支払いが必要になる。※2019年4月に国民年金は免除されることになったが、国民健康保険料や介護保険料は引き続き納付が必要。
保育園以外の託児サービスに依存
フリーランスや経営者が直面する課題のひとつに保育の問題がある。育児休業がないために、企業で働く「育児休業を終了する人」が優先される自治体の保活では不利が生まれている。
結果として、子供が保育園に入園できず、一時保育やベビーシッター、地域のファミリーサポートなど、保育園以外の託児サービスに依存。全体の約3割が、保育サービスに月額5万円以上かけているという。
求められるセーフティネット
アンケート回答者の9割以上が、「産前産後の所得補償」や「社会保険料の免除」「育休中の所得補償」などのセーフティネットについて「雇用形態を問わず必要である」「できればあった方が良い」と回答した。
上記のアンケート結果をふまえて、「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」は、産前産後休業中のセーフティネットとして、以下の要望を挙げた。
・被雇用者の産前産後休業期間と同等期間は、「社会保険料」を免除すること
・国民健康保険では「出産手当金」は、任意給付だが、一定以上の保険料を納付している女性に支給すること
また保育における公平性を担保するため、雇用の有無に関わらず労働時間を基準することや、託児費用の自治体補助などを訴えた。
・会社員と同様かそれ以上の労働時間であれば、認可保育園の利用調整に置いて、どの自治体においても被雇用者と同等の扱いをすること
・託児にかかる費用が認可保育園の利用料を超える分は、国や自治体の補助が受けられるようにすること。難しい場合は、必要経費もしくは税控除の対象にすること
今後、子供を産もうとしている女性の足かせに
NPO 法人「マタハラ Net」創設者で、株式会社natural rightsの小酒部さやかさんは、「母体保護の面からも出産手当金や、社会保険料の免除が必要です。収入もない状況で、社会保険料だけが出て行くのはつらい。次の妊娠、出産を止める理由にもなっています」と訴えた。
発起人のひとり、アユワ株式会社の渡部雪絵社長は、企業やメディアで働いた経験をふまえ、「最近は企業でも在宅ワーク、テレワークの導入が進んでいる。自治体によっては居宅内勤務、居宅外勤務なのかが基準になるが、企業でも実は在宅勤務している」などと訴えた。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事の平田麻莉さんは、産後1カ月以内に44.8%が仕事に復帰する理由について、「経済な理由もあるのではないか」などと以下のようにコメントした。
「(断ることが)事業リスクになる。マタハラに近く、2度と受注できないといった声もある。全てが終わった後に一括で支払われるような長期プロジェクトで、途中で妊娠・出産することもある」
同研究会による、署名活動サイトChange.orgの呼びかけには、9300人を超える賛同が寄せられている。3月に厚生労働省に提出する予定だという。