特別養子縁組の未来を考えるイベントが2月19日、東京都内で開かれた。幼いころに生みの親を亡くし、養子となったイラン出身俳優のサヘル・ローズさんや、制度改革に取り組んでいる塩崎恭久・前厚生労働大臣らが出席し、実体験などを交えて課題や思いを語った。
子供の未来をどう守っていくのか
特別養子縁組は、生みの親が育てられない子どもと、戸籍上の「親子」になる制度。日本ではここ数年、施設で育てるのが中心だった児童福祉政策が転換し、特別養子縁組や里親を増やそうという動きが広がっている。
政府はその一環として、6歳未満となっている養子の対象年齢の引き上げや、親の同意が得られないケースで、育ての親の代わりに児童相談所長が特別養子縁組の申し立てをできる制度の導入などの検討を始めている。
塩崎氏は、こうした法整備の動きについて「子供は、親や特定の大人との関係の中で愛着や人格を築いていく必要がある。子供を家庭で育てる、子供の将来・未来をどう守っていくのかという観点で議論していかないといけない」と訴えた。
続いて、福岡市の児童相談所、子ども総合相談センターの所長を務める藤林武史氏が、行政側の立場から現状や課題を語った。
藤林氏は、児童相談所や民間団体が特別養子縁組が必要だと判断したのに、結果的に断念したケースが270件(2015年度)あることを紹介。
生みの親の同意を待つ間に子どもが対象年齢を超えてしまったり、親が同意後に拒否したりすることなどが理由だと説明した上で、法整備の必要性を強調した。
「自分の親になって」と必死で訴えた
その後、サヘルさんら養子・里子の経験者や特別養子縁組で子供を迎えた人たちが、パネルディカッション形式で自分たちの経験や思いを語り合った。
サヘルさんの出身地のイランでも、施設で暮らす子供は多い。サヘルさんは4歳のころに親を亡くして孤児院に保護され、育ての親のフローラさんに迎えられる7歳まで施設で暮らした。
初めてフローラさんに会った時のことや施設にいた時の心境を、次のように振り返った。
「第一声で『お母さん』って呼んだんです。私たちにとって、施設に来てくれる人が母親みたいな存在になるんですよね。同じ施設に入った仲間たちと一緒に、日々来る人たちに『自分たちの親になってください』と必死で訴えていたのを今でも覚えています」
「いつか外に出たいし、普通に名前を呼んでもらいたい。壁を隔てた向こう側には一般の生活があるけど、私たちにはないんですよ。それがすごく羨ましかった」
幸運にもフローラさんに迎えられた後も、苦労は続いた。2人に血の繋がりがないことで周囲から心のない言葉をかけられたり、家庭で育った子どもに比べて知識や社会常識が大きく遅れてしまったりしたという。そうした自身の経験を踏まえて、0〜5歳児までの早い段階で家庭に迎えられることが大切だと訴えた。
「一対一の関係があるからこそ、子供にこれが正しいこれがダメだと教えられることがたくさんあります。施設では一人の大人が大勢の子供の面倒をみないといけないので、子供が疎外感を感じてしまいます」
「家族や親戚がいない子が、18歳で施設を出て社会で孤独にならないために、早い段階から家族になるための橋渡しや道順を作っていかないとなりません」
母親になって感じること
同じく登壇した星子良枝さんは、生まれてすぐに乳児院に引き取られ、2歳から小学1年まで児童養護施設で育った。それから中学3年までの8年間を里親家庭で過ごしたが、うまく馴染めず、施設に戻って高校時代を過ごした。
星子さんは、里親とは4歳のころに出会っていたが、生みの親が行方不明で同意が得られず、里親家庭に行く時期が先送りになった。「施設は周りにたくさん子供達がいて、みんなで食事するのが当たり前でした。環境の違いにすごく戸惑い、里親ともあまり良い関係を持つことができませんでした。7歳で行ったことで、うまくいかなかったのかなと今すごく感じています」と、複雑な心境を明かした。
2人の子供を出産した星子さん。自分が母親になって感じることがたくさんある。
「私が子供に今あげている愛情を子供の時に受けられなかった自分を想像して、すごく悲しい気持ちになります。里親家庭や特別養子縁組で、子供が早い段階から親の愛情を受けるのがすごく大事だなと思います」
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