17人が命を落としたアメリカ・フロリダ州・パークランドの高校で起きた銃乱射事件で、ある少年の行動が注目を集めている。
少年の名前はアンソニー・ボルゲスさん。事件が起きたマージョリー・ストーンマン・ダクラス高校に通う15歳だ。自分の体を盾にして、銃弾を受けながら、少なくとも20人の生徒の命を救った。アンソニーさんは現在入院中で、容体は安定しているという。ハフポストUS版などが報じた。
同じ高校に通うカルロス・ロドリゲスは当時の様子を、アメリカの朝の情報番組「Good Morning America」で以下のように語ったという。
「その場にいた誰も、どうしたらいいかわからなかった。その中で、アンソニーが同級生を救うためにリーダーシップをとってくれたんだ」
アンソニーさんは、近づいてくる犯人から逃げて教室に避難した20人の生徒の最後尾にいたという。彼は教室のドアを開けられないようにするため、身を呈して扉を押さえ、5発の銃弾を浴びた。アンソニーさん以外の生徒は全員、無傷だったという。
父のロイヤー・ボルゲスさんがABCニュースに語ったところによれば、銃弾を受けたアンソニーさんは父に電話をかけて撃たれたことを知らせたという。父が「じっとしていて」と声をかけた後、アンソニーさんの声は途切れた。
後からわかった話では、アンソニーさんは犯人が教室の中に入って来たときに、それ以上自分を撃たないように「意識がなくなっているフリ」をするために電話を手から離さざるをえなかったのだという。
勇気ある行動に、絶賛の嵐
父のロイヤーさんは事件翌日の2月15日、クラウドファンディングサイト「GoFundMe」で、アンソニーさんの治療のために募金を呼びかけた。
声明の中でロイヤーさんは、アンソニーさんが背中や両脚に銃弾を受けたが「命は無事で容体は安定している」と伝え、彼のために祈ってほしいと訴えた。
目標金額50万ドル(約5400万円)に対して、5日足らずで48万ドル以上が集まっている。
また、事件の4日後の18日には、高校があるブロワード郡のスコット・イスラエル保安官がアンソニーさんを見舞った。
「幸運なことに、彼は回復に向かっている、しかし、まだ手術を受けなければならず長い道のりが待っている。どうか私たちと一緒にアンソニーや、この恐ろしい事件の犠牲者たちの回復のために祈ってほしい」という言葉とともに、2人が握手を交わした様子がFacebookで公開されると、勇気ある少年の行動に絶賛の声が相次いだ。
SNS上では「彼こそ、本当のヒーロー」「トランプ大統領は彼を見舞うべき」などとアンソニーさんの行動を讃えるコメントが相次いでいる。
高校生たちがデモ参加「子供たちを守れ!」
行動を起こしている高校生はアンソニーさんだけではない。
今回の事件を受けて、フロリダ州では高校生たちが銃規制を求める抗議デモを行った。
学生たちは手書きのプラカードを掲げ、「政治責任がある!」「ダグラスに正義を!」「子供たちを守れ!」といったスローガンを連呼した。
集票力のある全米ライフル協会(NRA)の意向を受けて銃規制に取り組まない政治家たちに、生徒たちは怒りをあらわにしている。今回の乱射事件をニコラス・クルーズ容疑者(19)は、事件現場のダグラス高校に通っていた。
クルーズ容疑者については、銃の所有や異常行動、学校への銃撃を示唆する投稿などの情報が連邦捜査局(FBI)に通報されていたが、捜査されていなかったという。