止まらないシャンシャンフィーバー “上野のパンダ”なぜ人気?

上野動物園のパンダはなぜ、"特別"なのだろうか?

止まらないシャンシャンフィーバー "上野のパンダ"なぜ人気?

ジャイアントパンダの赤ちゃん、シャンシャン(左、香香)と母親のシンシン(真真)=2017年12月19日、東京都台東区の上野動物園[代表撮影]
ジャイアントパンダの赤ちゃん、シャンシャン(左、香香)と母親のシンシン(真真)=2017年12月19日、東京都台東区の上野動物園[代表撮影]
時事通信社

昨年6月に誕生、12月19日から一般公開されて、日本中に大フィーバーを巻き起こしているジャイアントパンダの赤ちゃん・シャンシャン(香香)。「自力で初排便した」、「木から落ちた」などなど、まさにその一挙手一投足が各種メディア、一般のSNSに至るまで報じられている。なぜ、日本人はここまでパンダ好きなのだろうか? そして、上野動物園のパンダはなぜ、"特別"なのだろうか?

一流芸能人並みの注目度を誇る国家間をつなぐシンボル

金網越しにじゃれ合うパンダのカンカン(右)とランラン=1976年3月24日、東京都台東区の恩賜上野動物園
金網越しにじゃれ合うパンダのカンカン(右)とランラン=1976年3月24日、東京都台東区の恩賜上野動物園
時事通信社

日本に初めてパンダがやってきたのは1972年。日中国交正常化により、中国政府からカンカン(康康)・ランラン(蘭蘭)の2頭のパンダが上野動物園に贈られた。いわゆる"パンダ外交"のはじまりだが、同時に日本中でパンダフィーバーが巻き起こったのである。1981年に中国がワシントン条約に批准すると、中国政府はパンダを日本に"贈る"のではなく、「共同研究のために中国籍のパンダを貸し出す」という形をとることになる。以後、日中国交正常化10周年、20周年といった節目節目にパンダが中国からやってきており、国家間をつなぐシンボルともなったパンダは、風邪を引けばニュースが新聞に載るなど一流芸能人並みに注目されてきたのである。

上野動物園では1986年にトントン(童童)、1988年にはユウユウ(悠悠)が生まれており、今回のシャンシャンが初めての上野生まれの赤ちゃんパンダではないのだが、前の誕生から30年も経てば記憶も薄れるのか、日本人の多くがシャンシャンの誕生を歓迎し、またそれだけ"待望"もされていたということなのだろう。

経済効果は200億円以上! 街を上げて盛り上げる"パンダイメージ"の定着

上野動物園のジャイアントパンダ、シャンシャンの公開に期待する「茶の君野園」の堀内進さん=2017年12月14日、東京都台東区
上野動物園のジャイアントパンダ、シャンシャンの公開に期待する「茶の君野園」の堀内進さん=2017年12月14日、東京都台東区
時事通信社

また、シャンシャンによる経済効果もバカに出来ない。関西大学の宮本勝浩名誉教授によると、東京都内にもたらす経済効果は年間約267億円にものぼると予想している。過去においても、1972年のカンカン・ランランのときは、上野動物園の来客者数が例年の2倍になったという(今回のシャンシャンフィーバーでは1.5倍と予想)。2008年のリンリン(陵陵)死去後、上野にパンダが不在だった時期もあったが、2011年にリーリー(力力)とシンシン(真真・シャンシャンの母)が来日し、"上野のパンダ"がまた復活。その際の経済効果も200億円ほどあったとされている。

初来日以来、パンダは上野にとってアメ横や西郷(隆盛)さんの銅像に並ぶシンボルとなり、上野駅入谷口のジャイアントパンダ像は待ち合わせスポットの超定番、上野動物園へと続く橋の正式名称は"パンダ橋"、上野の甘いもの屋さんではパンダをモチーフとしたスイーツが席巻、飲食店もパンダメニューが豊富と、これまでも上野はシャンシャン以前から、街をあげて「上野=パンダ」のイメージを盛り上げてきたのである。

上野だけじゃない! "パンダ界のビッグダディ"がいる和歌山県も話題に

ただ、日本のパンダは何も上野だけのものではない。今回のシャンシャンフィーバーを受けて、SNSなどで俄然注目が集まったのが和歌山県のアドベンチャーワールドだ。現在、アドベンチャーワールドには5頭のパンダが暮らしており、ガラス越し、もしくはガラスなしで間近で見ることができ、息遣いまで聞こえるなど、パンダを間近に感じることができるとして人気なのである。

「アドベンチャーワールド」の双子のパンダ、桜浜と桃浜、母の良浜=2015年5月21日、和歌山県白浜町
「アドベンチャーワールド」の双子のパンダ、桜浜と桃浜、母の良浜=2015年5月21日、和歌山県白浜町
時事通信社

同園の担当者は、「2016年の9月18日に生まれて1歳を迎えた結浜(ゆいひん)はとてもおてんばです。チャームポイントは頭の上にあるとんがったツノのような毛です。スタッフにもおやつのリンゴやニンジンをねだる姿がとても可愛らしいです。また双子のパンダ、桜浜(おうひん)・桃浜(とうひん)は、お姉さんの桜浜の性格はマイペースで、妹の桃浜は好奇心旺盛。お父さんパンダの永明(えいめい)は温厚な性格で、とってもグルメです。お母さんパンダの良浜(らうひん)は子どもを大切にするとてもいいお母さんです」と、同園に"所属"するパンダの愛らしさを語っている。ちなみに、お父さんパンダの永明は日本で15頭のパンダの父となっており、"パンダ界のビッグダディ"として話題になっている。

今回、上野のパンダがこれほど注目を浴びるのは、現在40代中盤の団塊ジュニア層の存在も大きい。パンダ初来日の70年代前半は自分の生まれた年にも近く、何となくパンダと成長を共にしてきた"タメ"(同い年)感があり、シャンシャンと自分の子どもを重ねたり、あるいは"東京の赤ちゃん"といった象徴的なイメージ、さらには2012年の出産直後の赤ちゃんパンダの死という記憶もあって、どこか感情移入するものがあるのかもしれない。

"客寄せパンダ"という言葉もあるが(1972年当時の田中角栄首相の発言がルーツとされる)、上野動物園、和歌山県のアドベンチャーワールド、さらには神戸市立王子動物園の1頭のパンダを含め、来年からの日本全体にいい意味での客寄せ効果、経済的な相乗効果を期待したいところである。

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