Google が11月、東京・六本木に無料でテレワークを体験できる「 Google テレワークラウンジ」をオープンした。
六本木ヒルズノースタワー1階という好立地に、オープンスペースやビデオ会議ができる個室、子連れに対応したスペースなど約70席。連日、多くの人が訪れ、山本裕介・ブランドマーケティングマネージャーも「反響はすごかった」とふり返る。
テクノロジーでスマートな働き方を提案する Google。女性活躍を推進するプロジェクト Womenwill の次に、テレワークを発信したのはなぜか? 11月に北海道・知床斜里でテレワークを実践した筆者が、山本さんの話を聞いてみたら、これからの新しい働き方が見えてきた。
テレワーク、実際やってみたら...
テレワークとは、「場所や時間を有効に活用する柔軟な働き方」のこと。Google は2016年、Womenwill の参加企業らに「在宅勤務」を試してもらった。モデル部署を決めて、約2カ月間、実際に部署のメンバー全員が「全員で1人1回は在宅勤務にトライ」を実践したという。
トライアル前は、約32%が「支障が出ないか不安がある」と回答。でもやってみたら支障が出た人は2.9%。意外と問題なく働けることが体験でわかったようだ。
Google テレワークラウンジを開設したのは、テレワークの働きかたを可視化するため。「やってみたいけど、いつからどうやってやればいいの?」という疑問の声に応え、無料の施設を作ったことで「こういう場所があるなら、やってみよう」と企業や一般の人たちを後押しした。
日本テレワーク協会は、テレワークを「モバイルワーク」「サテライトオフィス」「在宅勤務」の3つに分類している。Googleもそのスタイルに合わせて、フリースペースや個室、半個室、企業のサテライトオフィス的に使えるミーティングルームを設けた。
テレビ会議の部屋も、企業からの予約で埋まったという。ガラス張りの一室はブラインドを下ろして隠すこともできるが、多くはオープンな環境で打合せをしていたようだ。
「テレビ会議は、テクノロジーもセットで提示しました。パソコン一台、スマホひとつでできる。昔と違って今はネット回線も高速化している。ITツールを使ってトライできる環境にしたのは効果があった」と山本さんは話す。
生産性ってなに?
期間中は、連日イベントが開催された。参加者は、「生産性」への関心が高かったという。今回のアンケートでは、各自の生産性は、普段の生産性と比較して、直後に主観で判断してもらった。
山本さんは、「生産性をどう定義するかは、最終的に企業側がアウトプットで判断しないと難しいところもある」としながらも、「例えば、部署の売上や利益をキープしたまま、社員のワークライフバランスが高まれば、従業員の生産性が高まったともいえる」とコメントした。
テレワークの大きな可能性
「テレワーク」は、Google トレンドでもメジャーな言葉になった。だが、全国各地でテレワークを実践してきた山本さんは、「包含されている価値が、伝わりづらい」と指摘する。
「テレワークの価値は、ベーシックなところでは通勤時間の削減や、在宅勤務で子育てしやすい、など色々あるが、突き詰めれば、本来はどこで働いてもいいということ」
「働く場所が自由になったときに、どういうところで働きたいか。例えば、家族と一緒に過ごしながら働くのか。自分の理想の働きかたを考えるきっかけになる」
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確かに、ある日「どこでも働いていい」と言われたら、多くの人は困惑するだろう。オフィスは会社員の居場所でもある。しかし今や北海道の知床半島でもネットはほぼ通じる。地方で現地の人と交流しながら働くことは可能だ。地元の家族をケアしながら働くこともできる。
どういう人と会って、どういう時間を過ごすか。
どういう風に働きたいのか。
テクノロジーを使って、時間と場所にとらわれずに働く。今までより個人の働き方が問われる時代になる。筆者も体感したが、テレワークの実践は、個人の働きかたを考える機会になるだろう。