なんてことのない、ただの駅かもしれない。
切符さえあれば、誰でも行ける日常の景色かもしれない。
だけど、「海の見える駅」は、なんだか特別な魅力がある。
村松さんは、木造駅舎や無人駅のほか、ガラス張りの近未来な駅まで、これまでに約300駅を取材したという。同サイトでは、県別に情緒あふれる海の見える駅を紹介しており、近隣の様子や訪問レポートも合わせて読むことができる。
「海の見える駅」の魅力は何だろう? オススメの駅は? 秋に訪れたい駅はどこだろう? ハフポスト日本版は、村松さんにメールで聞いてみた。
——海の見える駅を取り始めたきっかけを教えてください。
2004年、13歳のときに初めてのひとり旅で、太平洋沿いを走る常磐線の車窓に出会ったことです。
末続駅という小さな無人駅でしたが、鄙びたホームと田んぼの先に広がる太平洋の情景に、幼いながら心奪われたのを覚えています。それから、他にも同じように旅情を掻き立てる駅に行ってみたいと思い、海の見える駅の旅を始めました。
——オススメの海の見える駅を3つあげるとしたら、どこでしょうか? その理由を、それぞれ一言で教えていただければ。
日本全国で300以上の海の見える駅があるので、3つに絞るのはとても難しいのですが...
北から順に、
1. 驫木駅(青森県/JR五能線)
日本海の荒波を背景に佇む木造駅舎が、まるで映画のようだから。
2. 日立駅(茨城県/JR常磐線)
日本でも唯一無二の、海に溶け込むようなガラス張りの駅舎があるから。
3. 大三東駅(長崎県/島原鉄道)
フォトジェニックな上、有明海に最も近く、その干満差を実感できるから。
——この秋、ひとりで行くには、どの駅がいいでしょうか?
秋は夕焼けが美しい季節ですから、夕日のよく見える駅がいいでしょう。ひとつ挙げるとすれば、北海道にあるJR室蘭本線の北舟岡駅がおすすめです。
ホームの目と鼻の先が噴火湾で、秋にはちょうど正面に夕日が沈みます。洞爺湖温泉も近く、日の入りを見た後、新千歳空港から東京や大阪に帰ることもできるので、連休の少ないこれからの季節でも訪れやすいのが特徴です。
他に、先ほど挙げた驫木駅や新潟県の青海川駅、愛媛県の下灘駅、長崎県の千綿駅なども夕日のよく見える駅です。
——ちなみに、村松さんの友人によれば、鉄道旅の趣味は知らせてなかったそうですが。
はい、出版が決まるまで、ほぼ誰にも言わずに続けてきました。
——誰にも言わなかったのは、何か理由あるのでしょうか...?
ニッチな趣味なので理解してくれる人がいると最初は思っていなかったのが、主な理由です。鉄道オタクと思われるのもちょっとはばかられたのかもしれません。
ただ、出版が決まって、これはきっと他人にも共感してもらえるテーマなのかも...? と思い、オープンにしました。
——長年ほぼ誰にも言わずに続けてこられたそうですが、あらためて鉄道旅の魅力は何でしょうか?
なによりも気軽に、素敵な景色に出会えることだと思います。
私は海の見える駅を「徒歩0分の景勝地」と呼んでいますが、列車に乗っているだけでも、思いもよらない絶景に出会う機会が数多くあります。
さらに、勇気を出して名も無き駅で降り、少し散策してみれば、旅行ガイドには載っていないような「自分だけの絶景」に出逢えることもしばしば。これまで数え切れないほど鉄道旅をくり返してきましたが、そのたびに「日本にはまだまだ素敵なところがあるんだな」と実感しています。