人種差別に反対するアメリカンフットボールリーグ(NFL)の選手らが、試合前の国歌斉唱で起立することを拒む動きが止まらない。それを批判するトランプ大統領との間では対立が深まっており、事態を重くみたNFLの最高責任者、ロジャー・グッデル・コミッショナーは全32チームに「選手たちは起立することが望ましい」などとする文書を送った。10月10日、アメリカのスポーツ専門チャンネル「ESPN」などが報じた。
グッデル氏は来週予定されているリーグの会議で解決策を話し合う方針で、過熱する選手らと大統領の対立を早期に収束させたい考えとみられる。
ワシントンポストによると、グッデル氏は各チームにあてた文書の中で、「多くのファンと同様、あらゆる人が国歌を支持するべきだと信じている」「それ(国歌斉唱)は試合において重要な瞬間だ。我々は国旗と国家を敬いたいし、ファンもそれを望んでいる」と指摘した。
一方で、「我々は選手をとても大事に思っている。彼らの意見も尊重しており、重要な社会問題も大切だ」と選手たちへの配慮も見せた。
ただ、グッデル氏は「国歌をめぐる論争は誠実な話し合いと、真の問題解決にとって障壁になっている。我々は選手とともに論争を乗り越えたい」と述べ、話し合いの必要性を説いた。
ESPNによると、10月17、18の両日にNFLの秋季会議が予定されており、グッデル氏はこの問題について各チームと協議するという。
手紙では具体的な方法は示さなかったが、グッデル氏は、問題解決のための共通のルールを設けたいとみられる。
NFLの指針では、「選手は国歌を支持するべきだ」とはなっているものの、斉唱時に起立することなどを義務付けているわけではないという。
この問題をめぐっては昨年、当時サンフランシスコ・49ersに所属していたコリン・キャパニック選手が国歌斉唱での起立を拒否。アメリカで黒人や有色人種に対する差別的な事件が起きていることに抗議した。
以来、同調する選手が後をたたないことから、トランプ大統領が批判。9月22日にアラバマ州で演説した際、「我々の遺産に対する完全な侮辱」などと語気を強めた。その後もTwitterで批判を繰り返した。
もし選手たちがNFLやほかのプロリーグで大金を稼ぐ特権が欲しいなら、偉大なアメリカ国旗(あるいは祖国)を侮辱することは許されないし、国歌を支持すべきだ。そうでないなら解雇だ。何かほかの仕事を探せ!
この2日後、今度はトランプ氏に抗議する形で複数のチームの選手たちが試合前の国歌演奏時にひざをついたり、腕を組んだりして斉唱することを拒否した。
さらには、インディアナ州であったインディアナポリス・コルツ対49ersの試合を見に来ていたペンス副大統領が、選手らが起立しなかったとして退席するなど、選手らとトランプ政権側との対立がエスカレートしていた。
私は今日、コルツの試合会場を途中退席した。なぜなら、トランプ大統領と私は、我が国の兵士や国旗、国歌を侮辱するようないかなるイベントに対しても、威厳を感じないからだ。
ワシントンポストは、グッデル氏はあくまで話し合いで問題を解決することを望んでいるが、チームによっては保守的なオーナーもおり、そうしたオーナーらと選手たちとの間で「板挟み」状態になっていると指摘した。