歌手の安室奈美恵さん(40)の衝撃の引退宣言が列島を駆け巡り、テレビでは自称「元・アムラー」たちの悲痛の叫びが映し出された。
「アムラー」がユーキャン新語・流行語大賞のトップテン入賞したのは1996年。あの頃、私たちは何に憧れていたのだろうか。そしてそれは、どんな時代だったのだろうか。
■「アムラー」って?
1996年前後、安室奈美恵さんの絶大なる人気を受けて、街には安室奈美恵さんの服装やメイクを真似した女性たちが溢れた。
ユーキャン新語・流行語大賞は入賞した「アムラー」を以下のように説明した。
スーパーアイドル安室奈美恵のファッションが大流行し、これをまねたギャルを「アムラー」と呼んだ。超ミニスカート、底の厚いブーツ、肩まで垂らす長い髪の三点セットが取りあえずの「アムラー」条件だそうで、街には"安室奈美恵もどき"が溢れた。
(ユーキャン新語・流行語大賞)
アイドル・松田聖子さんの髪型を真似る「聖子ちゃんカット」の流行など、憧れの誰かのファッションを真似したくなったりする気持ちはいつの世も同じかもしれない。
一方で、安室さんがもたらした"新しさ"を、96年当時の朝日新聞は以下のように分析した。
新しいのは安室自身の歌にも示されている強い自己主張だ。 赤くない口紅、細い眉を強調する化粧、素足など、男の好みに合わせるよりも自己表現を重視する傾向は、最近の流行にも表れている
(1996年6月8日 朝日新聞朝刊)
■1996年は女性が目立った年だった?
「アムラー」の流行に象徴されるように、1996年は女性がトレンドを引っ張っていくような空気感のある年だったようだ。
朝日新聞は1996年を総括し「『男の文化』にかげりが見え、『女性元気印』が目立った年」だったと、記している。(12月31日掲載「96年喜怒哀楽」)
「アムラー」の登場に加えて、ポケベルやプリクラなどの新しい流行を女子高生たちが牽引したという。
この年のユーキャン新語・流行語大賞には「アムラー」の他にも女子高生をはじめとした若い女性主導で生まれた言葉が入賞した。
●「チョベリバ」、「チョベリグ」
世を席巻している女子高校生言葉の最新バージョン。社会の出来事や人物の評価、好き嫌いの表現語として「サイコー」「サイテー」に替えて使われる。英語のベリィ・バッドやベリィ・グッドの上に「超」を冠したもの。
(ユーキャン新語・流行語大賞)
●「ルーズソックス」
俗に言う"だらしなファッション"、ソックスのゴムを抜いただけで、アッという間に女子高生の足元ファッションに大ブームを巻き起こした「ルーズソックス」。猫も杓子も、女子高校生の多くが、この「ヅルヅルだぶだぶ靴下」を履く圧倒的な流行となった。女子高校生の太い足を隠したいという深層心理、これを見事に突いたメーカーの勝利とも言われる。
(ユーキャン新語・流行語大賞)
●「援助交際」
ブランドの洋服や小遣い銭欲しさに、普通の家庭の女の子が売春をしている。そんなコギャルの実態をルポした黒沼の記事は、大人たちに大きなショックを与えた。しかも、売春を「援助交際」と称し、彼女たちに何の罪の意識も無いことは二重のショックであった。"売春"という実態を、言葉のマジックで「援助交際」と言い繕う忌まわしい流行語である。
(ユーキャン新語・流行語大賞)
また、流行語大賞にはマラソンランナー・有森裕子さんの「自分で自分をほめたい」が選ばれた。バルセロナオリンピック以降、スランプが続いてた有森さんが、アトランタオリンピックで銅メダルを獲得した時の言葉だ。
今や「自分へのごほうび」などと、女性が「自分で自分をほめ」ることは普通になったが、当時は斬新だったことがうかがえる。
ちなみに先日婚約会見を開いた秋篠宮家・長女の眞子さまが学習院幼稚園に入園されたのもこの年だった。
こうしてると振り返ると、すごい年月が流れていると感じる。
40歳という年齢まで駆け抜けてきた安室奈美恵さん。引退の直接的な理由や詳細は明らかにされていないが、「女性元気印」が目立ったあの時代をリードしてくれた"安室ちゃん"は、いつまでも私たちの憧れであることに変わりはない気がする。