尊厳死裁判の赤ちゃん、入院先に数千の脅迫 他の子どもへの見舞家族にも嫌がらせ

尊厳死論争の渦中にいる赤ちゃん、チャーリー・ガードくん。病院スタッフや、病院に入院する他の子どもの家族に、数千の脅迫が送られている。

先天性の難病で生命維持装置をつけているイギリス人の赤ちゃんについて、ロンドンにある入院先の病院が尊厳死を選ぶよう両親に勧めたところ、病院に対し、職員らを殺害するなどと書かれたメールなどによる脅迫が大量に届く騒ぎになっている。

病院側が7月22日に発表した声明によると、医師や看護師に対する殺害予告も含む数千という脅迫のほか、病院に入院する他の子どものお見舞いに来た人へも、嫌がらせをする人がいるという。

論争の中心にいるのは、生後11カ月のチャーリー・ガードくん。深刻な難病のために生命維持装置をつけている。

2016年8月生まれのチャーリーくんは「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」という疾患にかかっており、自力で呼吸もできない。ロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院で治療を受けているが、医師団は「脳に回復不能の損傷がある」と診断し、生命維持装置を外す尊厳死を両親に勧めた。

両親は、実験的な治療を受けさせるために、チャーリーくんをアメリカに連れて行きたいと希望したが、イギリスの高等法院は4月、これ以上の治療継続はチャーリーくんに不要な苦しみを与えることになるとして、病院側が求める尊厳死を認めた

チャーリーくんの両親(2017/07/09)

両親は上告したが、イギリス最高裁と欧州人権裁は6月に棄却。両親が求める国外治療を禁じた

しかし7月に入るとイギリス高等法院は、治療法についての「新たな証拠」が提出されたとして、審理を再開。25日に判断が下される見通しとなっている。

両親はこれまでに、治療費や渡航費用として130万ポンド(1億9000万円)以上の寄付を集めている。チャーリーくんを巡っては7月、ローマ法王やトランプ大統領が、治療の継続を求める両親を支持する発言をしている

両親は今回、病院スタッフらへの脅迫行為について、「私たちは病院職員や私たちの息子と関連している人に対する、いやがらせや脅迫的な行為を許しません」などと声明を発表。「人々は意見が異なることもあり、私たちはそれを受け入れています。しかし、越えてはいけない一線があります」などと訴えた。

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