メディアと表現7月6日、サントリーが新発売のビール系飲料「頂(いただき)」のキャンペーン動画を公開中止にした。
全国6都市の出張先で出会った女性が「頂」を飲んで『コックゥ〜ん!』という官能的な声でうっとりするという内容。女性を性的に描いているとみられる面があり、批判を呼んだ。
この騒ぎの一方、「ビールを飲み交わせば、考えが違う相手とも打ち解ける」という、ちょっと違った視点でお酒の効果を伝える動画が、世界の注目を集めている。
思わずビールを飲みたくなる。ブランドを好きになってしまう。そんなPR動画とは?
■「ビールを飲みながら、議論をしよう、世界を広げよう」
オランダのビール会社「ハイネケン」が2017年4月に公開したキャンペーン動画「Worlds Apart #OpenYourWorld」。
YouTubeで1300万回再生されているこの動画は、コミュニケーションを円滑にするビールの"一面"を描き、賞賛の声が集まった。
動画には、全く赤の他人で初対面の2人が3組登場する。政治問題や環境問題などで正反対の主義主張を持った者同士が、共同作業や会話を通じてお互いを認め合うストーリーだ。
初対面の2人がそれぞれ向かい合って、出会うシーンから動画は始まる。
実は正反対の主義主張を持った者同士なのだが、この時はお互いにそれがわかっていない。
「今日のフェミニズムは男性嫌悪だ」と感じている男性と、「私は100%フェミニストよ」と感じている女性が出会う。
「気候変動なんてそもそも起きてないと思っている」と主張する男性と「気候変動に関して僕たちは全然十分なアクションをしていない」と語る男性が出会う。
「性を変えた人々も自分の意見を言うべき」と主張するトランスジェンダーの女性と、「男性は男性らしく、女性は女性らしくあるべき」と考えている男性が出会う。
見ず知らずの他人と出会い、取り組んだ"課題"は、一緒にイスを組み立てること。
「あなたの取扱説明書がこっちにある」「僕はこういうの得意なんだ」「手伝うよ」
作ったイスに腰掛けた2人。自分自身のことや、自分と相手との共通点を語る。
「僕たちの共通点は...。野心的で、前向きで、そしてとっても...輝いてる。雰囲気が素敵、わかる?」
そして、2人は次にバーカウンターを組み立て、ビールをあける。
そこで見せられるのは、相手に出会う前に録った自分の主義主張を語る動画。少しだけ過去の自分だ。
「今日のフェミニズムは男性嫌悪だ」
「私は娘であり妻であり、そしてトランスジェンダー」
3組はそれぞれ、ビールを飲みながら議論し続けることを選ぶ。
少しだけ、価値観が変わったかもしれない自分と相手を噛み締めながら。
「ビールを飲もう、そして議論を続けよう」
「たとえ立場が違っても、有意義なのはこうして座って、ビールを飲んで、話すことだと思う」
「人生、白黒はっきりつくようなものじゃないじゃん」
会話を円滑にする手助けにもなるビール。描き方は様々だ。誰のどんな気持ちを、どう円滑にしてくれるべきなのか。改めて考えたい。
▼Heineken 「Worlds Apart | #OpenYourWorld」
【訂正 2017/7/14 19:30】
トランスジェンダーの女性と、保守的な男性の対面シーンの台詞が異なっていたので修正しました。